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コロナ禍でのアメリカ生活㉜「TikTokで蘇ったSea Shantyが世界をつなぐ」

2021年のアメリカは、史上稀にみる民主主義の危機を国家として迎え、現職大統領による扇動でクーデターともいうべき議会占拠の暴動が起きてしまった。私達この国に生活する人間にとって、今年はまだ16日しか経っていないという事を信じるのが難しいぐらい激動の日々であった。それに関しては、もう少し状況が推移し解明された段階で、まとめて書こうと思っている。今日は新年らしく爽やかなStoryから語りたい。

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Sea Shanty "Wellerman"の歌声が鳴り響く我が家

TikTokのPhenomenonとなったSea Shantyは、CNETの1月12日の記事によると、#seashantyのハッシュタグがつけられて、ヴィデオの再生回数は8,900万件を突破し、Google Trendも"sea shanties"の検索回数が過去最多に達したとTweetした。Spotifyでは12月末以来プレイリストは、1万2,000回を超えている。

以下は世界中がつながっていったSea Shantyに関するTikTokのTweetsである。

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こういう風に世界中がつながっていった

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夫も私もSailor(船乗り)なので、このTikTokでのバイラル化以前から、過酷な肉体労働を強いられる船乗りの労働歌のSea Shantyはよく知っていた。SF ベイエリアに住んでいた頃は、マリーナにあるQuinn's Lighthouseというレストランでライブ演奏を聴き、今はSan Francisco Maritime National Park Associationに寄付をしながら世界中の人達が毎月Zoomで参加するSea Shantyのライブ演奏を視聴していた。

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2週間ぐらい前に自宅でJazzercise(音楽を使った有酸素運動)をしていたら、夫のオフィスからSea Shantyの"Wellerman"が綺麗なコーラスとして聴こえてきた。

夫のオフィスに駆け込んだら、彼は嬉しそうに「TikTokでSea Shantyがバイラル化している。音楽的才能のある世界中の若者達がTikTokのデュエット機能を用いて、自分の声を重ねてアップロードし、"ShantyTok"というトレンドが発生している」と説明し始めた。

今まで私たちが見聞きしてきたShantyは、多くは各国のシニア層が様々なStoryをアカペラのShantyで語るということだったので、私はかなり驚き、夫ともども19世紀の船乗りの歌が現代に蘇ったと喜んだ。

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WikiによるSea Shantyの説明 

奇妙なソーシャルメディアであるTikTokのユーザ数は急増中

言うまでもなく、TikTokは、何でもないものを、物凄い勢いでバイラル化するチカラを持つ、奇妙なソーシャルメディアである。企業が意図的にマーケティングの一環としてコンテンツを広げようとするより、何でこれが?と思うようなものが、意外なコラボレーションによって発展的な展開が得られる。

勿論中国政府による関与の危惧から、2019年12月米国軍隊でのTikTok使用禁止、Trump政権との対立、MicrosoftやOracleの買収劇など、ビジネス的な話題は絶えない

但し、米国におけるユーザ数は急増しており、特に若年層ではすでにInstagramを抜き去りSnapchatに迫る勢いである。

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以下の表が示すように、2020年Q1のTikTokのダウンロード数は3億1500万にも達して、急増している。

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Sea Shantyとは?

以下はWikiによるSea Shantyの説明である。

Shantyは19世紀中頃に米国の商船で、異なる民族から構成される労働者を一致団結させるという目的のため使われた。少ない乗組員でより厳しいスケジュールの中で大きい商船を操業しなければならない時、歌によって労働者の間に連携が生まれ、効率よく働かせることができた。その後Shantyを歌う習慣は、帆船が発展した時代を通して、次第に世界の至るところで見かけられるようになった。

Shantyの起源は、イギリスや他の国々の沿岸で伝統的に歌われていた労働歌にあり、アメリカ南部で綿を担いで船に載せる作業中に歌われたような、アフリカ系アメリカ人の歌の影響を受けている。水夫によって親しまれた当時のポピュラー音楽(吟遊詩人の歌、人気の行進曲、陸のフォークソング)がレパートリーに選ばれ、船を操作するための様々な労働作業に合うように音楽的形式を変えられていった。アンカーを持ち上げたり、帆を用意したりする労働作業では、押したり、引いたりするために集団で協調して作業する必要があったためである。特徴はコールアンドレスポンスであり、ソリストと残りの労働者の間で演じられた。リーダであるソリストはShantymanと呼ばれ、その小気味良いセリフと、ウイットの効いた詩、力強い歌声を高く評価された。

19世紀末の蒸気船への切り替えと船上作業への機械の導入によって、Shantyの実用的価値は徐々になくなっていった。20世紀前半には労働歌としての役割は求められなくなった中で、Shantyに関する情報はベテランの水夫や民俗学のコレクターによって保存されてきた。特に1920年代から、商業音楽、大衆文学、その他メディアは、シャンティに対する陸の人々の関心を触発した。労働歌としての役割から離れた、これらの現代的パフォーマンスは、文化的、歴史的芸術としての新しい文脈を提供した。

Wellermanは、19世紀のニュージーランドの船員たちの労働歌で、歌詞は、過酷な肉体労働に明け暮れる船乗りたちが、酒を積んだ補給船を心待ちにしていることを描いている。

以下は今回のトレンドの源となったスコットランドの郵便局勤務の26歳のNathan Evans に関するTweetである。

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蘇った現代のSea Shantyを楽しもう!

コロナ禍や米国議会占拠暴動といった予想もしなかったイベントに直面する人々は、その不安と恐怖を拭い去るかのように、TikTokという奇妙なプラットフォームを使って、世界中の人達と一緒にコラボレーションを始めた。異なる背景の船乗りが1つの労働を連携するために、歌ったShantyは、2021年という、未だに明日がどのようになっていくかが読み取れない世界で、歌を通じてつながる喜びを与えてくれたようである。

船乗りの私としては実に嬉しく、今もWellermanを口ずさみながら、この原稿を書いている。何だか自然に広い海原で航海している気になり、連携のエネルギを感じるのは私だけなのだろうか? と思う。

まずはみんなでSea Shantyを歌いながら、2021年の海原に出かけよう!


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アメリカの現実⑧「パンデミックや公聴会に関係なく巨大化するGAFAMの5社」

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7月31日Appleは株式時価総額が、国営石油会社Saudi Aramcoを抜き、世界最大に返り咲く

金曜日、Appleは終値ベースで1兆8422億ドルと過去最高額に達して、Saudi Aramcoの1兆7595億ドルを上回って、再び上場企業で最大の時価総額を持つ企業に返り咲いた。Q3のレベニューは597億ドルで、対前年比11%増となる。パンデミックで多くの企業や消費者生活が打撃を受ける中で、GAFAMと呼ばれる5大企業(Google、Apple、Facebook、 Amazon、Microsoft)の業績は2桁の伸び率で絶好調である。

いみじくもサウジアラビアの石油公営会社という旧勢力ともいうべき企業を追い越して、トップに立ったのがテック企業のAppleというコト自体が、今の時代が、誰に支配されているかを象徴しているように思える。

以下の表はNasdaqにおけるGAFAMのシェアであるが、7月22日の時点で、5社で46.3%を占めている。Teslaの2.7%もちょっと異常と思えるが、GAFAM5社の独占化は、パンデミックの恩恵によって、今後もっと膨らむはずで、支配者の地位は不動に見える。

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The Four + Microsoft = GAFAM

2017年のScott Gallowayの書籍 ”The Four: The Hidden DNA of Apple, Amazon, Facebook, and Google”の4社が、我々の消費行動のどの部分を狙っているかの分析は、実に的を得ていると思う。

彼は、この4社をこんな風に説明している。

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Galloway: “Google targets the brain and our thirst for knowledge. Facebook is trained on the heart and our need to develop empathetic and meaningful relationships. Amazon targets the guts, satisfying our hunter-gatherer impulse to consume. And Apple, with its sleek, sensual products, has its focus firmly on our genitals.”

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彼の分析を一言で言い換えると、こんな風になる。

Google: ブレイン(ナレッジ)=我々のナレッジへの渇き、即ちブレインを狙っている。
Facebook: ハート(人間関係)=我々のハートが共感に満ちた有意義な人間関係を築くように訓練している。
Amazon: ストマック(消費行動)=我々の狩猟採集の消費行動を満足させるストマックを狙っている。
Apple: プライベイト(生殖=異性への性的魅力)=スマートで性的魅力のある製品は、我々のプライベイトな部分にフォーカスしている。

書籍が出てから3年経つが、我々の生活は「The Four + Microsoft=GAFAM」の5社に依存し、各社の棲み分けはすでにオバーラップして、我々の住む世界を支配する5社はより強化されている。

GAFAMの5社は「パンデミックの焼け太り」で高収益を上げている

以下の表を見れば一目瞭然で、ちょうど議会でGAFAの4社のCEOが召喚されて、市場の独占支配を追求されている最中に、この5社のQ2の利益は2桁となり、この3か月間で、5社は合計339億ドルの利益を創出した。

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GAFAMの5社の2019年1‐6月と2020年1‐6月の半年間のレベニューの比較:
Amazon:1644億ドル(34%増)
Apple:1180億ドル(6%増)
Alphabet:795億ドル(6%増)
Microsoft:731億ドル(14%増)
Facebook:364億ドル(14%増)

投資家は、GAFAに対する議会の政治劇を無視して、業績の好調さのみに目を向けている。GAFAの銘柄に対するアナリストの投資判断は83%が「Buy」としている。Amazon株は年初から急騰しているにもかかわらず、投資判断を「Sell」としているアナリストは1人だけである。

GAFAの4社のCEOがヴィデオ会議経由で一堂に会した議会公聴会

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GAFAの4人のCEOはヴィデオ会議システムを経由で5時間以上に渡り、市場での支配力を巡り議会公聴会で糾弾された。議員らは非競争的行為やユーザのプライバシー、偽情報といった問題について追及した。

第3者が販売するAmazonのマーケットプレイス、AppleのApp store、自社の資産にトラフィックを集めようとするGoogleの傾向、ソーシャルネットワークの世界で自社の地位を脅かしかねない企業を次々と買収するFacebookのやり方などが問われた。議員や規制当局は数年前からGAFAに対し圧力をかけているが、ほとんど成果を挙げていない。

The Four(GAFA)のロビー活動費の急増

以下のグラフが示すように、Google、Amazon、Facebook、Appleは、過去2か月間で、4社合計5450万ドルをワシントンDCのロビー活動に使っている。これは2015年から35%増で、2010年に比較すると500%増となる。この金額の推移を見れば、4社の政策への影響力の大きさと、公聴会の圧力が効力を持たないかが分かる。

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GAFAMは今後どんな風に社会(=我々に)に貢献してくれるのか?

昨日からMicrosoftのTikTok買収の話が出回っている。Reutersによれば、親会社のByteDanceは、米国でのTikTokのオペレーションを手放す可能性を示唆しており、そうなるとMicrosoftが米国ユーザのデータベースを握り、他企業もTikTokに参与できる可能性がある。セキュリティ問題で待ったがかかっているこの買収に関しては、現在ホワイトハウスと協議中らしい。

私は、何もGAFAMを目の敵にしている訳ではなく、1人の利用者として、この5社に、公私共々大いに依存して、生活している。言い換えると、山ほどお金を使っている、5社のロイヤルカスタマーで、さらに立派なStake Holderでもある。直接彼らのサービスや製品を購入しなくても、間接的に、毎日彼らのプラットフォームにログインしたり、アプリを使って、彼らの広告主の製品やサービスを購入している。

そう「お得意さん」として、今、彼らに言いたいのは、経済のエコシステムの中でエンドユーザである我々が豊かにならないと、最終的に彼らのビジネスにも金が潤沢に流れなくなるという点である。我々が豊かになるために、彼らが今直ぐ出来ることを提案してほしい。

我々が豊かになるためには、まず我々の心の安定が必要である。社会問題を重視して、差別やヘイトを助長するような動きを防止した上で、製品やサービスを提供してほしい。またこれだけ儲けているのだから、Tax haven利用から足を洗って、米国に対する納税義務をしっかり履行してほしい。税収が増えれば、アメリカ社会(=我々)により大きな経済的な支援が可能となる。そうした上で、企業としてより儲けるのは、結構なことだと思う。

ロイヤルカスタマーの我々が、5社に本当に失望し、見切りをつけ始めれば、栄耀栄華を誇るテックジャイアントも、どこかでTipping point(臨界点)を迎える。

平家物語「祇園精舎」の序文は、どんな権力にも当てはまる真理だと思う。

祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。 猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉙「マスク着用を政治的ステートメントとする愚かな党派的考えが、ここまでコロナ感染拡大を促した」

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幸運なことに私達夫婦は、University of UtahのCOVID-19の調査プロジェクトに選ばれて(ランダム抽出)、PCR検査を2人で受けた。2週間後に、2人ともネガティブであることを正式に通知されて、まずはほっとした(無自覚症状でポジティブだったら、感染のキャリアとして他の人にデリバリしてしまうから)。事前にオンラインで2人の過去6か月間の行動やその他の質問項目に回答して、事前予約をとって、指定された日時に検査所(教会の駐車場)に向かった。ドライブスルーので、待つことなく指定の駐車場にさーっと入って、防護服に身を固めた担当者達がテキパキと作業していた。車の窓を開けて、鼻に綿棒をかなり強く差し込まれて(ちょっと涙目)、血液をスパッと採取され、ほんの5-6分で、車に降りることなく、さらっと終わった。彼らは個人情報を保護しつつ、私達をトラッキングすることも可能ということで、かなり顧客満足度の高いスムーズなオペレーションだった。

多くの州では医療従事者や検査員を守る防護服やツールの不足もあり米国はひっ迫している

私達の横のヘルスケアの保険会社の検査会場では、駐車場に入る車の長蛇の列ができており、担当者が車1台1台に検査目的を確認して指示していた。今コロナ感染の検査には、医師のReferralを持って行けばできる。但し、それを受けるために、車の行列ができており、夫はあの列には加わるのであれば、僕は引き返したと告白している。

州や郡によって異なり、一概にこれはこれこれこうだと言えないのが米国であるが、リアリティはかなり悪化していると思う。7/25現在で感染者428万人、死者14万9000人という米国は、昨日の新感染者は3万人、新たな死者は477人とうなぎのぼりである。当然のように医療従事者やエッセンシャルワーカーに必要な防護服からツールまで不足しており、検査すら中々簡単にできない状況である。

パンデミック開始後4か月たってやっと現大統領はマスク着用の重要性をいやいやながら言及するという無責任さ

以下のグラフを見てほしい。YouGovとImperial College Londonの調査結果で、米国では、3月初旬は10%以下、4月初旬は30%、7月半ばで78%がパブリックでマスク着用と回答している。この数字の推移を見れば、如何にアメリカ人がマスク着用に関して、ためらいがあったがこれで分かると思う。

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理由は、マスク着用を現大統領を含めた共和党が政治的ステートメントとして扱ったことが大きな理由の1つとして挙げられる。それ以外には、マスク着用は感染拡大初期に保健当局者の見解が分かれていたことも挙げられるが、民主党の大統領候補のJoe Bidenがマスク着用の重要性を訴求することに、反対・対抗するツールとして、現政権はマスク着用は個人の自由という方便を使っている。この党派的な立場におけるマスク着用は、多くのトラブルや論議を巻き起こしている。

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3人目の死者まで出たマスク着用のトラブル

7月14日ミシガン州の郊外のコンビニエンスストアで、マスク着用を別の男性客から求められた男が相手を刺す事件が発生し、その男は逃走先で警官に撃たれて死亡している。これでマスク着用に関連したトラブルによる死者は少なくとも3人目となる。

Walmart、BestBuy、Starbucksなどは、小売店舗は来店客へのマスク着用を義務付ける措置を実施している。米国では少なくとも30州が何らかのかたちでマスクなどの着用を義務づけている。ただし、その実施は多くの場合、エッセンシャルワーカーである店舗の社員に任せられており、ソーシャルメディアには、社員がマスクを着けない客から怒鳴られている様子も投稿されている。Goldman Sachsは、全米でマスク着用を義務化すれば米経済の損失を1兆ドルいう試算を出している

マスク着用とSDがリスク削減の大きなポイント

以下の表が示すように、マスクを着用し、他者とのソーシャルディスタンス(SD)の距離を保てば、感染するリスク削減は、着用せずにSDを無視する人達より大きく軽減できる。これは子供でも分かる理屈であり、科学的な事実である。これを過去4か月間認めずに、マスク着用とSDを政府レベルで奨励してこなかった現政権に対して、もう言うべき言葉も見当たらない。経済再開をする云々の問題以前に、公衆衛生の観点から、個々人にこの2つを義務付ければ、既に亡くなった14万9000人の死者のうち、何人が助かったのかと思うと、遺族の悲しみと医療関係者の悔しさが察せられる。実に愚かな政権である。

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大学はこの秋キャンパス再開のために学生の検査を実施する予定だが、このままでは検査ツール不足が悪化する

大学の動きも活発で、今秋にキャンパス再開のために、各大学の保健部門が主導して学生や教員やスタッフの広範かつ頻繁な検査を行う計画を打ち出している。但し問題は、検査キットを含む検査能力がこれに追い付くかどうかという点である。学生達もオプションがあるならば、キャンパスライフに戻りたいと切望しており、彼らの安全を確保し、ウイルス拡大を促す温床になるのを避ける方法について、現在議論されている。パーティやスポーツイベントには参加しないと学生達も発言しているが、何万人も生徒を抱える大学がどこまでこれらの学生全員を検査して、その後も彼らが公衆衛生を守るような行動をとれるかの保証はどこにもない。また大学生に限らず、小中高の学校再開も現政権は推奨しており、これらの学校が再開されると、今後は子供達によるクラスターが発生することは否めない。

国民を守ろうとしない現大統領を支持する人達が、現時点でも38%いるのがこの国のリアリティ

現政権の無責任さは、今に始まったことではないが、11月の大統領選挙まで待って、2021年1月20日の就任式まで現政権がこの国を導くと思うと、酷い頭痛に襲われる。コロナ禍に関して戦略がゼロという政権を抱えて、苦しむのは、医療関係者、エッセンシャルワーカー、既往症を持つ病人、保険のない低所得者層など、コロナ禍を避けようもない人達である。

馬鹿げた党派的な発言や行動を一切やめて、最低限の公衆衛生の基本ともいうべきマスク着用とSDの順守を市民に促し、国レベルで検査キットやツールの提供を十分に行うといったことをまず実行してほしい。

国民を守ろうとしない現大統領を支持する人達が、今でも38%(6/30時点のGallup調査)存在するという米国の現状は実に悲しい。

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彼らを主体にして2016年現政権が誕生した。あと4年間こうしたカオスの中で暮らすことは出来ない。どちらにしても、11月にはその答えを知ることになる。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉘「パンデミックは今後必ず起こる現実。今こそUBI(Universal Basic Income)のようなセーフティネットが必要」

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パンデミック云々に関わらず、富める者はいつでもさらに富む

以下の表はパンデミックがスタートした3/18から6/17までの米国のビリオネラー達の資産推移であるが、ロックダウンで休業や失業にあえぐ中小企業、若年就労者、低所得者層の経済的な苦しみとは無縁に、大幅に資産を増やしている。米国の643人のビリオネラーの資産合計は、3/18時点で2.9兆ドルであったが、6/17には3.5兆ドルと20%増加した。また、4,550万人のアメリカ人が失業保険申請をしている間に、新たに29人がビリオネラーに仲間入りしている。

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Jack Dorseyも参加し始めたUBIの実現のための実験

Twitter & SquareのCEOのJack Dorseyは、4月個人資産の28%に当たる10億ドル(Square株を売却して充当)を、コロナ禍の被害対策の慈善基金「Start Small Foundation」を立ち上げて寄付すると発表した。彼のフォーカスは、少女たちの健康と教育、更にUBI(Universal Basic Income)であるとし、寄付用途をGoogle docのスプレッドシートに上げて、一般の人達が閲覧できるように共有するという情報の透明性を訴求した。

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以下の表は、米国のビリオネラーの個人資産の寄付額の順位であるが、Dorseyは個人としてはダントツのトップの金額10億ドルを寄付している。

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Dorseyは、今回その基金から300万ドルを、カリフォルニア州Stocktonの市長のMichael Tubbs(29歳)が結成した「Mayors For A Guaranteed Income(MGI)」と呼ばれる、全米16都市の市長達の連合に投入すると発表したこの連合は、市民に無条件で定期的に現金を給付する「UBI(Universal Basic Income)」の実験の一環として始められる。

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Forbesの記事によると、Squareの株価は4月以降に165%増となり、Start Small Foundationに提供された株式の価値は22億6000万ドルまで膨らんでいる(7/9現在)。Dorseyは、ケニアとウガンダでUBIのテストを実施中のNPOのGiveDirectlyにも1120万ドルを寄付している。

DorseyやYangが推進するUBIとは何か?

UBIの詳細に関しては、5/26に書いた私のブログを参考にしてもらいたい。

「UBIとは、生活保護や各種の助成金や補助金、年金や医療保険などの現在の社会福祉制度を大幅に簡素化し(もしくはすべて廃止し)、その代わりに住民全員(世帯ごとではなく家族全員)に無条件に毎月一定の現金を支給する制度である。この考えは16世紀に英国の思想家Thomas More(トマス・モア)が、社会政治を風刺した1516年の著作『Utopia(ユートピアはモアの造語で、どこでもない即ちどこにもない場所)』で最低生活保障について触れているように、決して新しい考え方ではなく、現在世界中で様々な実験が試みられている。」

このUBIの理念は、私も応援した民主党大統領選挙候補だったAndrew Yangの選挙キャンペーンの中心メッセージでもある。Andrewは、全ての国民に月間$1,000の“Freedom Dividend”を提供すべきだと主張した。これだけではとても生活は賄えないが、少なくとも低所得者層の生活を支える糧にはなる。パンデミックによって最も大きな被害を受けるのは、これらの人達である。貧困はメンタルを破壊し、ドラッグや銃撃事件やDVや様々な犯罪を創出する。

Dorseyは5月のAndrewのポッドキャストに出演し、UBIの有効性を訴えている。「最低限の収入が保証されることで、人々は心の平静を保ち、新しい世界に向かうための学習を進めてゆける」と彼は言う。DorseyがGiveDirectlyに寄付した資金は、パンデミックによる打撃を受けた低所得家庭への現金給付にあてられた。また彼は、Andrewが設立した低所得者家庭を救済する基金のHumanity Forwardにも500万ドルを寄付している

UBIの効用は?

効用に関しては、以下の5つのポイントがあり、私が書いたブログに詳細を記してあるので、時間がある時に読んでもらえたらと思う。敢えて、もう1つ重要な点を付け加えるとすると、通常低所得者層は、給与から給与と経済的に綱渡り状態で暮らしている。そんな彼らにとってUBIは、「どんな時でも定額の給付金が入り、それによって心に余裕が生まれて、困難に陥った時にそれを乗り越えようとポジティブな心構えが生まれる」という効用も大きいと思う。

1) 貧困の消滅

2) 広がる富の格差の中で社会を下支えする人達へのサステイナブルなサポート

3) 女性の家事労働といった無償労働の可視化などで男女格差が緩まり、女性の経済的な自立への道ができる

4) 都市の人口集中緩和や地方都市の評価増などで家族が暮らしやすくなる

5)AIや自動化による雇用喪失によって失業した低賃金労働者へのサポート

UBIの財源はどうするのか?

前述のStockton市長のTubbsは、財源に関して様々な解決策を上げており、「Dorseyのような富裕層の税率を引き上げるのも一つの手段だし、2017年のTrump政権による減税策を廃止すれば、年収12万5000ドル以下の全ての米国世帯に500ドルを給付できるだろう。さらには、膨らみすぎた防衛予算を引き下げることでも資金確保には可能だ」と言う。彼は「人々や社会にセーフティネットをもたらす新たな政策が求められて今、重要なことは、まず政治的決断を下し、物事を前に進めていくことだ」と指摘する。彼は今回のUBIのテストプログラムを成功に導き、現金給付の試みが、連邦政府レベルに広がることを望んでいる。

財源の1つの方法として富裕層の税率の引き上げが言及されているが、これに関しては1つ朗報がある。7/13、世界の富豪83人が、各国の政府に対して自分たちのような富裕層に大幅に増税するようにと署名した公開書簡が公表された世界の富豪でつくる団体「Millionaires for Humanity」には、ディズニーの一族であるAbigail and Tim Disneyなどを含む、富裕層、起業家、投資家らが参加し、富裕層に増税し、富の格差の是正などに充てるべきだと訴えている。

まずは決断が必要

UBIはそう簡単に実施できないと多くの人は言うが、パンデミック対応として期限付きで、カナダ、イギリス、スペインは既にUBIを実施した。パンデミックの渦中で、時代はgroundswellともいうべき急速な変革を求めて動き始めている。これを具体化するための試みは、色んな所でなされている。

富裕層も応援する時代である。前進するためにアタマを絞って工夫すれば、良いアイディアは必ず出てくる。まずは決断である。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉗「サバイバル脳の指令」

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若者を中心に感染は拡大、感染者数は290万人、死者数は13万人になる(2020/07/06現在)

米国では50州全てがビジネスを再開した後も、コロナ感染は一向に収束を迎えていない。政府の無策或いは科学を無視した指導もあり、マスクを着用せず、ソーシャルディスタンス(SD)を守らず、生活し始めた結果、若者を中心に感染者数や死者数は、うなぎのぼりである。独立記念日の週末では、フロリダは1万1,500人、テキサスは8,300人、カリフォルニアは5,400人という、1日の感染者数として新記録という、何とも酷い状況である。

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若者たちは、高齢者と異なり、自分達は感染しても大丈夫と高をくくっているが、若者たちの間でも症状が悪化して死に至るケースも出ており、今や注意深くなったシニアよりも、若者たちの感染が拡大している。

マスク着用を政治的意見の表明とする馬鹿げた考え方が横行し、科学的な事実を信じない人達が米国には多く存在し、コロナ禍は、とても収束といった方向に向かうとは思いづらく、刻々と病床は足りなくなっている。私は過去数か月間、1週間に1度の食料品の買い出し以外は、余程の必要性に迫られない限り外出せず、外出時のマスクとSDは必須の行為として順守して、社会的責任を果たしている。マスクとSDは、市民としての「Responsibility & Accountability」だと思う。

Note :「責任」と訳される2つの言葉の違い。「responsibility」:これから起こる(=未来)事柄や決定に対する責任の所在。「誰の責任であるのか?」という時に使われる。「accountability」:すでに起きた(=過去)決定や行為の結果に対する責任、またそれを説明する責任。「誰が責任を取るのか?」という時に使われる。「responsibility」は他の人と共有することは可能だけど、「accountability」は他の人と共有できないという点が、この2つの言葉の違い。

「サバイバル脳」が不安解消のために「Bingeだらけの行動」を指令する

このパンデミックで多くの人達は「binge-watching(映画やTV番組などのコンテンツを一気に視聴する)」のように、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ソーシャルネットワークし過ぎ、Zoomし過ぎ、など、こうした行為で、不安やストレスを解消している。また多くの人達は、今ビジネス再開で、 “Quarantine 15 (在宅太り)”になってしまい、慌てて大きいサイズの服をオンラインで購入するといったコトが起きている。この"Quarantine 15"は、元々 “freshman 15” という言葉で、「大学の新入生は15ポンド(約7キロ)太る」というものからきており、”Quarantine”は、もともと病気を拡大させないための隔離を意味しているが、「self-quarantine」のように外出自粛という意味で使われ、コロナ禍は米国では「Covid 19」と表現する。

以下は、不安解消のための気晴らしをするという人間の行為は、もともと人間に備わっている「サバイバル脳」に由来するという、ブラウン大学公衆衛生大学院准教授のJud Brewerの記事から抜粋してみた

生物学的に「サバイバル脳」は、食べ物と危険の両方を探す役割を担っている。私たちの祖先が新しい食糧源を発見した時、胃から脳に一連のシグナルが送られ、ドーパミンが分泌した。そして将来見つけるのに役立つよう、食べ物が存在する場所の記憶が形成された。危険についても同じことが言える。祖先たちが初めての場所に行く際は、自分が食糧源にならないように、目を凝らして、動くものを警戒する必要があった。不確実性が彼らを助け、それゆえ人間は種として生き残っている。 しかし、不安と気晴らしの関係を理解する上で重要な点がある。その場所をよく知れば、そこが危険であろうとなかろうと、不確実性が低下するということである。つまり、私達の祖先は一つの場所を繰り返し訪れることで、緊張を緩和することができた。 このことが今何を意味するのか? それは、確実性が高まると、脳のドーパミンの使い方が変わるということである。例えば、物を食べたり、危険な場所を見つけたりした時に、ドーパミンを放出するのではなく、そうした出来事を予期した時に放出するのである。 ドーパミンは、一般的な文献で呼ばれているような「快感分子」とはほど遠い。行動が一旦学習されると、ドーパミンは一貫して、行動したいという渇望や衝動と関連づけられる。進化の観点から、これは理にかなっている。先祖たちは一度食糧源の場所を知ったら、そこへ行って食糧を手に入れるよう、駆り立てられる必要があったからである。

Brewer教授に言わせると、我々は現在のパンデミックに対して、全く同じことを行っていると指摘する。

退屈や不安を感じると、人々はお菓子を食べる、ニュースフィードをチェックするといった衝動に駆られる。胃や胸に不快感が生じ、何かがおかしいと気づく。脳が「何かをやれ!」と命令し、特定の行動つまり気晴らしをすると気分がよくなる。大事なことをやるべき時、YouTubeでかわいい子犬の映像を(繰り返し)見るのは、脳にとって当然の選択で「サバイバルの基本」である。気晴らしをすることは、古代に危険や未知のものを回避していたのと同じなのである。不確実性は不安を生じさせ、不安は何らかの行動を促す。 その際の問題は、多くの場合、気晴らしのための行動が、不健康で役に立たないという点である。永遠に食べ続けたり、酒を飲み続けたり、Netflixを見続けることはできない。実際、それをやるのは危険である。脳がそうした行動に慣れてしまい、最終的にいつもの成果を得るために、もっとやらなければならないからである。サバイバル脳は人間を助けようとしているが、断ち切ることが困難な習慣や、依存にすら向かわせていることに、人間は気づいてない。

 "Anxiety-Distraction Habit Loop(不安―気晴らしの習慣ループ)"をどのように断ち切るか?

Brewer教授は、 "Anxiety-Distraction Habit Loop(不安―気晴らしの習慣ループ)"に陥っている場合、自分が望まない習慣をつくり出し、それを継続させる"Trigger-Behavior-Reward(引き金―行動―報酬)"というプロセスを明らかにする必要があるという。 引き金(不安)、気晴らしの行動(食ベる、酒を飲む、テレビを見る)、報酬(気晴らしをすることで気分がよくなる)を認識する。 次に、その習慣のループがどれだけの報酬をもたらすかを考える必要がある。脳は報酬のレベルに基づき行動を選択する。無理に食べないとか、ソーシャルメディアをチェックしないようにするのではなく、自分の行動が招く精神的・身体的な結果に焦点を当てる。その短時間の気晴らしで、どう感じるか?どれくらい続けるのか?タスクを完了できずに不安が増すなど、裏目に出る結果をもたらす影響はあるか?といった点である。 注意すべきは、すべての気晴らしが悪いわけではないということで、問題となるのは、求める報酬が得られなくなった時である。報酬のレベルは典型的な逆U字型のカーブを描くので、ある時点で気晴らしの楽しさは頭打ちになり、そこから先は下降し、落ち着きがなくなって不安な状態に戻り、また別の楽しいことを探そうとする。

そして、このプロセスの最後のステップが「BBO(Bigger Better Offer:より大きくて、よりよい試み)」を見つけることである。脳は報酬のレベルがより高い行動を選択するので、悪い習慣よりも報酬レベルが高い行動を見つける必要がある。 その際、必ずしも新しい行動を選択する必要はない。有益から有害に変化した時点で、その行動をやめることもいいと教授はいう。

自分の不安およびその解消方法を認識する

不安解消のための気晴らしは、誰も必要だが、その習慣化或いはちょっときつい言い方だが、それに依存し始めると厄介な問題となる。日本は世界でも稀有といっていいほどの、パンデミックにおける特殊な位置づけの国である。世界中の科学者が、日本のこの感染状況の原因を分析しようと色々言及しているが、みんな首を傾げるばかりである。東京都で1日に100人増えたといった情報を目にするが、米国在住の私として、まあ何と微笑ましい牧歌的な国なんだろうと思う。だから、日本ではこの問題はそれほど重視されないのかもしれない。

但し、米国のパンデミックの長期化は自明の理で、いつどんな形で収束するか予想がつかない。人々の不安は消えず、「サバイバル脳」による指令によって、気晴らしは悪習慣になる可能性が否めない。まず、我々がやらなければならないことは、長期化する以上、不安解消で実施している行為が、本当に自分たちに「報酬」をきちんと与えているかどうかを検証して、高い結果を得られない場合は、より良い行動を見つけることから始めるしかない。

口で言うのが簡単だが、水は低きに流れるがごとく、人は手軽なものに手が出る。だからといって自分を甘やかして放任するわけにもいかない。兎に角、まずは何事もBingeし過ぎないように自戒したい。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉔「危機の際の企業のメッセージは金太郎飴状態」

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一昨日のMembers主催のセミナーは、「Purpose-driven companies」をキーワードに、コロナ禍におけるマーケティングの話をしたが、参加者が150名ぐらいまで膨れ上がり、半分ぐらいは「ひさみファン」でしょうと担当者に言われた。何はともあれ、多くの方に視聴していただいたのは、非常に有難い。どうもありがとうございました。。普段日本語を喋る機会が殆どなく、尚且つお喋りな私が話し始めると、予想通り1時間では収まり切れず、セミナー後のフィードバックも質疑応答のためにもっと時間を増やして欲しいという声をいただいた。今後のオンライン或いはオフラインも、セミナーは1時間半か2時間ぐらいはとって、ゆったりと話せるようにしたい。

危機の際に、なぜ企業はGenericなマーケティングメッセージしか発しないのか?

セミナーの中で、広告代理店の方が「企業メッセージとして、マーケティングギミックではなく、Purpose(信念・目的)が重要なことは分かるが、自分達、広告代理店は何をすべきなのか?」という質問があった。答えの全てをここに書くことは避けるが、国を挙げての危機的な状況下(例えば9.11のテロ攻撃、戦争勃発、マス銃撃事件、自然災害など)に陥ると、企業メッセージは、一様に金太郎飴を切ったように、非常に無難で当たり障りのないGenericなメッセージになる。

以下は、それを皮肉ったヴィデオで、冒頭は悲しみを感じさせるピアノの音楽が流れ出して、センチメンタルな言葉をちりばめて制作されており、ロゴを変えたら、どの企業の広告かさっぱりわからないほど、Genericな(金太郎飴的な)のコーマシャルとなっている。

“uncertain times”
“we‘re here for you”
“people” and “families”
“comfort and safety of your home”
"we're all in this together!"

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When a company or brand releases a Coronavirus Response ad, they might tell you that we're living in "uncertain times", but that "we're here for you". They may say their top priority is "people" and "families" by bringing their services to the "comfort and safety of your home". And don't forget: "we're all in this together!"

誰もが思いつく、当たり障りのない、センチメンタルなメッセージではなく、企業のPurposeを行動で可視化させてほしい

徐々にビジネス再開が始まっているとはいえ、失業&休業、感染への恐れ、制限のある不自由な生活、さらに、George Floyd事件による全米に広がった抗議運動と暴動という、様々な不安の中で、人々は生活をしている。そんな状況下で、各社がオンエアするコマーシャルは、ロゴを変えたら見分けがつかないぐらいに全てが同じ。あたかもロイヤリティフリーの無償のヴィデオ素材で同じ広告代理店が作ったかのようである。現時点で、企業として、他に言いようがないにしても、あまりにも意味のないメッセージが自宅にいる私達の目に触れる。

消費者は、こんなセンチメンタルなメッセージに広告費を投下するならば、実際に今直ぐ最も困っている人達をサポートする行動を示して欲しい、言うだけでなく、企業のPurposeを行動で示して、可視化させてほしいと思う。

Kotlerは2013年に「5Ps(Product, Price, Place, Promotion and Purpose)」を提唱している

Philip Kotlerが、すでに2013年に5番目のP(Purpose)を加えて「5Ps(Product, Price, Place, Promotion and Purpose)」を提唱しているように、今マーケティングで重要視すべきはPurposeである。彼は “Purpose should be a form of core business(信念&目的はコアのビジネスを形作るものでなければならない)”として、Purposeと同様に、企業の資産として重要なものとして「corporate culture」を挙げている。

なぜ5番目のP(Purpose)が必要なのか? Kotlerは調査した結果、社員が働きがいのあると考える企業のマーケティングコストは、同業他社よりもはるかに低く、顧客満足度と顧客維持率ははるかに高いという結果を得ている。企業が顧客、社員、サプライヤーに関心を示していれば、誰もが幸せになり、したがって、ビジネスの全体的な収益力が向上する、と彼は言う。

エージェンシーはいやでも応でも戦略的なマーケティング領域に踏み込まなければならない

冒頭の広告代理店の方の質問への答えは、エージェンシーは、クライアントに対して、戦術的な領域からより戦略的なマーケティング領域に踏み込む必要があるというコト。Purposeに関しては、「すでに企業が持っているPurposeが、その企業のコアのビジネスを形成するものとなっているか? 企業はそれを単なる理念あるいはお題目のように取り扱っていないか? CEOから前線の社員までがそれを共感し実施したいと思っているか?」など、プロフェッショナルで尚且つ消費者目線を持つ、ニュートラルな立場でPurposeを研磨できる立場にある。

消費者心理を考えると、現在のように混沌とした社会状況下では、戦術的なマーケティング費用は無駄であり、一般論にしか思えない企業メッセージの露出は、意味がない。Sustainableになり得ないマーケティング活動は避けたほうがいい。

消費者は、Social issueに対する企業の行動を期待し、見つめている

米国では、George Floyd事件以降、全米に広がる抗議運動に対して、企業がどう考えているか、どう行動するかを、じっと見つめている。5/31-6/1の直近の調査結果は、人々は、企業が問題に足を踏み入れるのを怖がって沈黙を守るのではなく、問題解決への声明と行動を期待している。企業に期待する行動のトップ4は、以下である。

•  略奪により被害を受けたスモールビジネスのための基金設立:49ポイント
• コミュニティのクリーンアップのための寄付:42ポイント
• 抗議者と警官をサポートするステートメント:21ポイント
• 社会の正義や不平等問題への寄付:20ポイント

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行動のみが可視化可能なので、今、重要なことは「有言実行」することだと思う。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉒「ロックダウンはまた起こりえる。UBIのように社会の基盤を支えている人達をサポートする仕組みを考えるべきでは?」

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米国では4月に2,250万人が職を失った

米国の4月の失業率は第2次世界大戦後では史上最悪の14.7%となり、2,250万人が職を失った。州ごとに格差があり、失業率トップ3は、ネヴァダ州の28.2%、ミシガン州の22.7%、ハワイ州の22.3%。最も失業率が低い州はコネチカット州の7.9%で、それに続くのがミネソタ州の8.1%とネブラスカ州の8.3%である。驚くべきことは、ネヴァダの3月の失業率は7.9%で当時最も高い失業率であったという点で、ロックダウンによって、それが一気に20.3ポイントも増加するという異常さである。 以下の表は、3月と4月の各州ごとの失業率の推移であるが、一目瞭然で一気に失業率が急増した。

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雇用を重視する日本と違って、米国では企業の四半期ごとの収益如何で、真っ先に行われる経費削減は「人員解雇」である。皮肉なコトに、こうした解雇の対象となるのは、莫大な金額のサラリーをもらっている役員クラスではなく、低賃金の最前線で勤務する社員の場合が多い。現場の社員を1,000人解雇するより、役員を1人解雇したほうがよほど効率よく経費削減が可能なのに、犠牲になるのは常に簡単に削られる一般社員達である。更に皮肉なコトは、例え経営に失敗したトップ(CEOや他のCクラス)でも退職時には高額な「Golden parachute(退職する際に払われる割増退職金、ストックオプションなどで払われる場合が多い)」が用意されているので、彼ら自身は逆に焼け太り(ビジネスは傾くが、退職者は大金を手にする)をする場合もある。

在宅勤務可能な職種はまだまだ少なく70%以上はロックダウンの度に同様の境遇に陥る

米国では、制限付きでも在宅勤務可能な職業は、まだまだ非常に少ない。2016年の調査では米国の職場の僅か3.6%が「半分あるいはそれ以上の在宅勤務」を実施している。机上の上では、56%はリモートワークが可能であると推定されているが、現実にはそう簡単に許されていない。但し、今回のパンデミックでロックダウンとなり、米国では2021年末までに25-30%は、「1週間のうちに何回かは在宅勤務が可能」となると予測されている

仮にこの予測が実現したとしても、それでも70%以上は、在宅勤務可能なラグジュアリな仕事に就ける訳ではないので、次回またこうしたパンデミックが起きた場合は、今回同様に職を瞬時に失う。こういう状況を考えると、まず社会を下支えしている、この莫大な人達をサポートする仕組みが必要だと思う。

「UBI(Universal Basic Income)」を真剣に考える必要がある

私は、民主党大統領選挙候補だったAndrew Yangのキャンペーンの中心メッセージ「UBI(Universal Basic Income)」の考え方に関心がある。この考えは、、利益や収益性の追求一辺倒の20世紀型資本主義がもたらした富の格差の是正、貧困や差別の解消、さらに将来AIや自動化によって消失する人間の職などへの影響を和らげる効果がある。また今回のロックダウンのような経済停止の際に職を失う或いは倒産をする人達へのサポートともなる。以下に記した内容は、UBIに関しては素人の私が、NRIの上級研究員の柏木 亮二氏のAnnie Lowreyの『みんなにお金を配ったら(GIVE PEOPLE MONEY)』の書評コラム、Brianna ProvenzanoによるViceの記事(日本語訳)、World Economic Forumの記事などを参考にして、まとめたものである。

UBIとは、生活保護や各種の助成金や補助金、年金や医療保険などの現在の社会福祉制度を大幅に簡素化し(もしくはすべて廃止し)、その代わりに住民全員(世帯ごとではなく家族全員)に無条件に毎月一定の現金を支給する制度である。この考えは16世紀に英国の思想家Thomas More(トマス・モア)が、社会政治を風刺した1516年の著作『Utopia(ユートピアはモアの造語で、どこでもない即ちどこにもない場所)』で最低生活保障について触れているように、決して新しい考え方ではなく、現在世界中で様々な実験が試みられている。

Andrewは、全ての国民に月間$1,000の“Freedom Dividend”を提供すべきだと主張した。これだけではとても生活は賄えないが、少なくとも低所得者層の生活を支える糧にはなる。パンデミックによって最も大きな被害を受けるのは、これらの人達である。貧困はメンタルを破壊し、ドラッグや銃撃事件やDVや様々な犯罪を創出する。

UBIは既に始まっている?

今回のパンデミックによる倒産や失業を最小限に留めるために、イギリスは3月から全休業者の給与の80%を国が支給する措置を(上限は月2,500ポンド)始めて最低3ヶ月は継続するとしている。シアトル市は市内の大企業の法人税を引き上げ、その財源を元に市内の10万世帯に毎月$500を無条件で支給する法案を審議している(当面は4ヶ月間の予定)。スペインでも4月5日「可能な限り迅速にUBI(最低所得保障制度)」制度を導入すると発表している。これら一連の動きは、UBIの発想に近く、UBIが必ずしも実現不可能な政策ではなくなってきたことの証明でもある。

また以下のが示すように欧州では2017年すでに68%の人達がUBIの導入を求めている。

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UBIの効用

1) 貧困の消滅:世界中の貧困層(1日あたり$2以下で暮らす人達)撲滅のために様々なプログラムが提供されているが、最も効果的な方法は、モノではなく、直接現金を支給することである。もし彼らに毎月$500の現金を支給できたら、世界の貧困問題は直ちに消滅するという。現金は食糧や日用品、更に学費や貯金にも変えられる。現金こそが貧困からの脱出のために最も効果的な支援となる。

2) 広がる富の格差における、社会を下支えする人達へのサステイナブルなサポート:これは言わずもがなで、米国の富の格差は史上例を見ないほど大きい。米国の現実は、もし緊急事態が起きて医療費$400がかかってしまった場合、支払えないと答えたアメリカ人が40%に及ぶという事実がそれを証明している。仮に1人当たり$1000の支給が実現すれば、例え緊急の医療費が必要、あるいは失業といった危機に直面しても、金銭的に多少の余裕が生まれる。UBIは人々の労働意欲を失わせるという議論はあるが、労働市場経済学の研究で、UBIは人間の働く意欲にほぼ、或いはまったく影響を及ぼさないと報告している。なぜならば、人間の社会的価値の多くが仕事に根ざしており、人間は労働をしたがるからである。

3) 女性の家事労働といった無償労働の可視化など、男女格差が緩まり、女性の経済的な自立への道ができる:「無償労働」の経済的価値は少なく見積もっても全世界で10兆ドルと言われており、UBIはそうした目に見えない労働を可視化させる。さらに女性が毎月定額の現金を入手することで、男尊女卑が強い社会における女性(配偶者、娘など)は、経済的・社会的な自由を持つことが可能となる。

4) 都市の人口集中緩和や地方都市の評価増などで家族が暮らしやすくなる(人口増加):現在は雇用創出が大都市中心で行われているが、在宅勤務の浸透及び人口が集中する都市への不安は、今回のパンデミックで、多くの人達が再認識した。UBIが導入されると、こうした傾向を促進するように、住宅価格や生活費が安い地方の評価が高まる。また1人当たりの支給となるので、家族が4人の場合は4倍の支給が得られることとなり、教育費の高騰なので子供を持つことへの不安があった家族もよりゆとりが生まれて、人口が増える可能性も出てくる。

5) AIや自動化による雇用喪失と低賃金労働の増加:かつでは、ロボットは人間のために単純で退屈な労働を代替えしてくれると思われていたが、現実は逆な方向性を示している。高度な技能を習得したAIや自動化によって、今後20年の間に多くの人達の職が奪われてしまうという予測は、リアリティを増している。UBIの導入は、そうした人達にある程度の金銭的な安心感を与えて、低賃金の単純な仕事のみを強いられずに、職業選択の自由がもてる。さらに、家族や愛する人達との時間を割いてやっていた副業、兼業をしなくて済むようになる。

財源はどうするのか?

現在の複雑な社会福祉政策を撤廃し、その予算をUBIに充当すれば十分に財源は確保できるという試算がある。さらにこれに付随して、現在の富裕層(世界の富裕層の10%が世界の富の85%を所有)により累進的な所得税を課す、キャピタルゲイン課税を強化するといった税制改正によって、必要な財源は確保できるという意見もある。さらに世界を支配するような多国籍企業(FAAAM=Facebook、Apple、Amazon、Alphabet、Microsoftなど)も、莫大な利益を上げながらも、税制の抜け穴をうまく利用して納税額を抑えている。世界のトップ企業1,000社が公平に納税していれば、UBIの額としてはささやかでも、世界全体に分配することは可能ともいえる。

20世紀に確立された社会の仕組みの制度疲労は酷い

米国でもロックダウンは解除されて、ビジネス再開が徐々に始まっているが、過去2-3か月間の経済的打撃を回復させるような動きは、どんな業界にもない。米国では、5/26現在感染者数170万人以上、死者10万人以上と、とても収束には程遠い状況である。ましてブラジルの例を挙げるまでもなく、南米を中心して衛生状態の悪い南半球の国々では、今まさに感染者及び死者数が拡大している。北半球が夏場を何とか乗り切ったとしても、秋口の第2波が襲い掛かってくる可能性もある。その際に、またしても大きな影響を被るのは、ギリギリで生活している人達である。こういう状況を鑑みると、20世紀に出来上がった社会の仕組みを大幅に変革する必要があると思う。

私は経済に関しては素人だが、このUnfairな社会を少しでも、Betterにするために、もしかしたらUBIは有効ではないかと思い、自分の備忘録として、このブログでまとめてみた。

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コロナ禍でのアメリカ生活㉑「在宅勤務の浸透で最も重要なコトは、企業と社員の信頼関係の構築」

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オフィスのデスクの前でPCのモニターを見つめてタイプを叩いている姿のみが、「社員の働いている姿」としか思えない、管理職がまだまだいる。そうした管理職の中には、「在宅勤務の部下の勤務状態に信頼が置けないから、オンライン経由で可能な監視ツールを使おうをしている」人達もいる。在宅勤務に関するこうした管理職の不安は、「天唾(天に向かって唾を吐くようなもの)」だと思う。彼らは、自分の部下が、どのような人格でどのように働くかを把握できていないから、可視化できないと不安になる。仕事は、相手(上司、部下、同僚、顧客)との信頼関係なしには成り立たない。

無期限の在宅勤務を発表する米国のテック企業

米国では今朝Facebookが、無期限で在宅勤務を許可する計画を発表したMark Zuckerbergは、10年後の2030年までに全社員の半数は在宅勤務にする方向であるという。新たに雇用するシニアエンジニアは在宅勤務で、既存の社員はパフォーマンスがポジティブ評価ならば、無期限の在宅勤務の許可を得られる。すでにTwitter及びSquareも、2社のCEOのJack Dorseyが、「無期限の在宅勤務を認め、社員全員にホームオフィス用のサプライ購入のために$1000を支給する」と発言している。FacebookもGoogleも、既にパンデミック対応で社員の在宅勤務を今年末まで実施するようにしており、他のシリコンバレーのテック企業も同様で、「在宅勤務」の浸透はパンデミックでさらに加速化し、今後のホワイトカラーの働き方を大きく変える方向を示唆している。

在宅勤務は2021年末までに25-30%まで増えると予想

パンデミックは、我々が今まで日常当たり前だと思ってきた様々な固定概念に異なる角度から光を当てて、新たな事実を視覚化・再認識させた。米国では一見在宅勤務が浸透しているように見えるが、実際には2016年の調査で僅か3.6%が「半分あるいはそれ以上の在宅勤務」を実施しており、企業が実施を許可すれば、56%はリモートワークが可能であると推定されている。また別の調査では、37%がリモートワーク可能で、シリコンバレーの場合は51%は在宅勤務可能という。パンデミックによって在宅勤務の重要性と必要性が認識された今、テック企業云々に限らず、2021年末までに「1週間のうちに何回かは在宅勤務が可能」となるのは25-30%と予想されている。多くの企業は、今どれだけ、在宅勤務が企業にベネフィットをもたらすかを、再認識し始めている。

在宅勤務の必要性とベネフィット

1) Risk Management:今回のパンデミックが、収束に向かったとしても、否が応でも、パンデミック、或いは壊滅的な影響を与える自然災害は、今後もまた起こりえる。その場合、当然のように大規模なロックダウンや自宅待機が起こる。そうした危機に備えて、企業はProactiveにどういう体制で臨むべきなのかを考えれば、必然的に在宅勤務システムを何らかの形で、企業組織に取り入れる必要が生じる。

2)莫大な経費削減効果:物理的に人がオフィスで勤務している場合でも、実際には50-60%はデスクを離れており、実は無駄な勤務状態(=経費)が発生している。コロナ禍の間、米国企業の在宅勤務のイニシアティブは、1日当たり300億ドルの経費削減が可能と試算されている。さらに、在宅勤務によるビジネストラベルの削減は、半分をリモートワークにすると、社員1人当たりに$11,000の経費、社員も年間$2,500から$4,000の個人的な経費が削減できるという 。 実際に在宅勤務が浸透すれば、オフィススペースは縮小され、オフィス維持にかかる経費も大幅に削減され、従来企業経営で必須経費と考えられていた費用は大きく減少する。

3)社員がより幸せになると生産性は上がる:米国の場合は、職種に限らず、最低限度の在宅勤務を80%が望んでいる。日本では満員電車の通勤、米国では渋滞の中での通勤が、どれだけ社員のストレスになっているかを、今回多くの人達が同時に再認識した。勿論在宅勤務となり、オンラインミーティングが入りすぎて、忙し過ぎるという声もあるが、米国では時間の自己管理がより可能となり、上司や同僚とのコミュニケーションで邪魔される時間がなくなり、より効率的になったという声を耳にする。また、多くは家族や友人との時間や趣味に使える時間が増えて、嬉しいという。在宅勤務に慣れている人は、特にこの傾向が強く、コミュニケーションツールの進歩と普及は、在宅勤務初心者でも慣れれば、より快適になると推測できる。

なぜ我々はオフィスに行くのか?

どの職業或いは企業を選ぶのか?ということは、今までは「オフィスに毎日通う」というコトを前提に、人々は選択していた。そのため、人々は無理して住宅や物価が異常に高いにシティに住むか、或いは異常に長い通勤時間を受け入れていた。在宅勤務は、その固定概念を覆し、自分が住みたい場所に住みながら勤務可能という、新たな方向性をもたらした。特に人の密集するエリアの危険性と不便さは、多くの人達が今回のパンデミックで再認識した。夫婦が2人とも在宅勤務、子供達全員が自宅学習といった特殊な状況は誰も予想しておらず、自宅における自らのワークスペース確保の準備はなされていなかった。そうした問題も、今後は在宅勤務浸透によって、より密集度の少ないエリアで(=低い生活費で広い居住スペース)、ホームオフィスが確保できる環境を選べるというコトで、解決できる。すでにパンデミック前の2018年の調査で、SFベイエリアの住民流出は始まっており、46%は住宅価格と生活費の高いことを理由に、この地域を離れる予定だと回答している。また2019年のテック系社員対象の調査でも、Gen Z & Millennials(18-34歳)の41%が、2020年中にシティを離れる予定と回答している

在宅勤務のポイントはお互いが信じあうコト

在宅勤務の浸透は、雇用や人事評価などにも大きな影響と変革をもたらす。冒頭で述べたように、部下の勤務状況をオフィスで可視化できないと、勤務評価をできないような管理職や評価システムは、今後企業内でワークしなくなる。雇用時のJob descriptionの明確化と組織に頼らず自主的な勤務活動が可能な人物の選択といった形で、企業内の無駄な人材を削減する可能性が高まる。但し、こうした成果主義的なワークスタイルで最も重要なことは、例え可視化できなくても、相手を信じる信頼関係が構築されているかどうかという点である。管理職側の不安も分かるが、それ以上に、社員も管理側の評価が公平に行われているかといったコトに疑問を持つ。両者が不信感や疑問を抱かないように、企業として高度なポリシーとカルチャーを持つことが、New Normalとして浮上してくる在宅勤務を成功させる重要なカギとなる。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑳「コロナはロールシャッハ・テスト的な役割を果たしている」

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良く言われる、"Is the glass half empty or half full?(コップの水は半分しかない、或いは半分も入っている)"というフレーズは、個人が状況を楽観的或いは悲観的に見るかを示唆するレトリックとして使われる。最近色んな人達の言動を見ていると、コロナ禍は個人の無意識下の性格を投影する性格検査「ロールシャッハ・テスト」的な役割を果たしているように思える。

ロールシャッハ・テスト(Rorschach test)とは?

以下は、Wikiによる説明である。

ロールシャッハ・テスト(Rorschach test)は、被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを語らせて、それを分析することによって被験者の思考過程やその障害を推定するものである。スイスの精神科医Hermann Rorschachによって1921年に考案された。紙にインクを落として2つ折りにして広げるとできる、ほぼ左右対称の図版のカードが用いられる。これは原理的には簡単に作成できるが、現在でもロールシャッハによって作成されたものが用いられている。カードは10枚1組で、無彩色のカードと有彩色のカードがそれぞれ5枚ずつ含まれる。各カードは約17cm x 24cmの大きさ。

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これがRorschachによって作成された図案 

ロールシャッハ・テストは、被験者にとって、どのように反応するとどのように分析されるかが分かりにくいため、回答を意識的に操作する反応歪曲が起きにくく、無意識な心理の分析が可能であるとされ、1920年代に開発されて以来、長年にわたって広く用いられている。一方、テストの科学的妥当性への疑問や回答結果の分析に高度な技術を要し効率が悪いといった批判も存在する

この画像を見て「蝙蝠」を連想してしまった私

私は心理学者ではないので、ここでロールシャッハ・テストに深入りするつもりはないが、Wikiでこの図案を見て、思わず「あっ、蝙蝠みたい」と思ってしまった。勿論、コロナウィルスの感染源として最初に報道された武漢の市場の蝙蝠のことと、我が家は今の時期から蝙蝠が夕方以降飛来することといった2つの記憶が、多分アタマに強く印象付けられて、思わず図案を「蝙蝠」と思ってしまったのだと思う。私がここで書き留めて置きたいコトは、図案による無意識下の性格テストではなく、「コロナ禍」に対して、人がどう反応し、どう考え、どう行動するかという点である。私は周囲のアメリカ人の親戚・知人・友人達や、ソーシャルネットワークやメディア上の日本の知人友人達の言動を見て、なるほど、人はこういう風に考えるんだと、改めて実感している。

楽観的・悲観的といった二元論は当てはまらず、誰もが不安だけど、その不安への反応が人によって異なる

コロナ禍に関して、冒頭の"Is the glass half empty or half full?"のように、どちらの見方をするかで楽観的と悲観的に分ける、といった単純なことはできない。何せ、ここまで、短期間でパンデミックとして世界中に拡大し、尚且つ人の移動禁止やロックダウンといったような、未曽有の経験を世界中の人達は今同時に共有しているからである。正体不明というほど厄介なモノはなく、誰もが「この先どうなるのか?」という不安を抱える。但し、その不安への反応と対処の仕方は個人によって異なり、ロールシャッハテストではないが、その人の今まで見えなかった無意識下の性格まで見えてしまうような気がする。

短期間か長期化するのか?という異なる見方で変わるマインドセットと行動

何時これが収束するのかは、今の時点では誰もわからず、全ての人は速やかな収束を願っている。但し、ここでコロナ禍による規制は、1-2か月で終わると見るか、下手すると1年以上かかると見るかで、マインドセットやAttitude(姿勢や態度)は大きく変わる。

短期間収束派は、事実を目にしているがそれをそのまま咀嚼するには、あまりにも現実が重く、多分に希望的観測にシフトし、コロナ禍の影響を低く見積もっている人達。彼らは、当然制限がかかっている現在の生活への不満やストレスがあり(外出・外食・飲むに行くと言ったことが気軽に出来ない、家でオンライン経由の仕事や対人関係に飽きたなど)、今の生活は今後の「New normal」となりうる可能性を秘めていることを、受け入れる準備が出来ていない。

長期収束派は、過去3か月間の社会及び経済的な推移を目にし、さらに未だに多くの解決できないコロナ禍の状況を鑑みて、その長期化を予測し、それを受け入れようとしている人達である。彼らは、今の制限を緩和すると、より状況が悪化する可能性があると考え、現時点で「New normal」に備えて、今自分が出来ることの手を打とうとしている。長期収束派にも、勿論テレワークが出来ない人も多くいるので、そういう人達やエッセンシャルワーカーは、危険の中で毎日働いている。それでも長期化を予想している以上、極力自分は感染をしない、或いは感染源のキャリアにならないように工夫して生活している。Physical distancing(物理的な距離)とは、個人間の問題ではなく、公衆衛生上の最も重要な行動で、社会問題といえる。

「Overpromising and Under-Delivering(約束をし過ぎてそれが達成できないメッセージ)」

消費者が広告を嫌う心理には、3つの大きな要因がある。1つ目は、消費者が行うとしている行動を邪魔する場合(オフ・オンラインでコンテンツにリーチしようとするのを邪魔する広告)。2つ目は、広告メッセージが「Misleading(故意に消費者が誤解するように訴求する)」。3つ目は、「Overpromising and Under-Delivering(約束をし過ぎてそれが達成できないメッセージ)」である。人間は、誰でも邪魔されたり、誤解を招くような物言いには、腹を立てる。但し、消費者が企業に最も失望するのは、実は善意から招く場合もある「Overpromising and Under-Delivering」という3番目の場合である。理由は簡単で、人は約束を破られると「裏切られた」と感じて、相手を恨みたくなるからである。ここでのポイントは「デリバリできないほどの期待値を人に抱かしてはいけない」という点である。

これは、コロナ禍の環境でも活かせる部分で、長期化という重い選択(=低い期待値)をしておけば、収束が早まった時、まず真っ先に思うことは「良かった!早く終わった」という喜びである。また「New normal」は、かつての生活のように、未来は薔薇色で何でも上手くいくというコトはあり得ない(=低い期待値)と思えば、本当に「New normal」が始まった時に適応がしやすくなる。

人は「変化」するのではなく、置かれた環境に適応すべく、日々「進化」していく

私は昔からOptimistic(楽観的)でありながら、Realistic(現実的)な考えで生きてきたが、ここに来て、"Cautiously realistic(意識して現実的に)"に、シフトしている自分に気が付いた。楽観的な部分が消えたわけではないが、思いもよらない状況がドラスティックに頻繁に起きるので、かなり自分の知覚を意識して、現実をしっかり認識すべきであるという考えが、より鮮明になりつつある。

ロールシャッハの図案が蝙蝠に見えるのは、2020年5月高地の山に囲まれるSt George, Utahに住む今の私であるからで、2019年5月海沿いのビーチの街Santa Barbara, Californiaに住んでいた頃の私は、そうは思わなかったと思う。人は変化するのではなく、置かれた環境に適応すべく、日々進化していく。Herbert Spencerは1864年に『Principles of Biology』で「適者生存(survival of the fittest)」の概念を発案し、その影響はCharles Robert Darwinの『種の起源』の進化論へと繋がった。

環境に適応して進化出来ない人間は、おのずと脱落してしまう。パンデミックは1回で終わるものではなく、これから何回も襲ってくる。それを想定して、現実的に日々変わる環境を受け入れ、それに適応して進化すべく、心構えを持ちたい。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑲「5月になったからって、どこが4月と違うの?アブナイ、アメリカの規制緩和」

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昨日は夫と2人で1週間分の食料の買い出しに出かけた。2人が大いに驚いたことは、規制緩和が出た途端、多くの人がマスクを掛けずに店の中を歩きまわり(店にはマスク着用お願いの張り紙で出ている)、また住人以外のバケーションで来ているような人達を見かけたこと。夫はキャッシャーで待っている時、後ろの男性がマスクを掛けずに大きなくしゃみをしながら、手で顔をこすり、小さな娘に大声で話しながらふざけているコトに、憤っていた。

5月と4月の感染状況は何も変わっていない、むしろ悪化している地域が多い

以下は、5/11現在でNY Timesのまとめによる現在Reopen及びシャットダウンしている州の表である。黄色の西海岸と東海岸の北部、5大湖周辺のMidwestの州のみが、シャットダウンあるいは制限を加えている州で、ブルーの州はすでに部分的にReopenしており、うすい水色の州もじきにReopenする州である。

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実に危ないと思う。5/11時点で米国全体の感染者数は137万6,849人、昨日新たな感染者9,210人、新たな死者が395人が加わり、死者合計は8万1,182人である。以下のグラフは、合計死者数の推移と1日当たりの死者数の推移である。どちらも、4月に入って急上昇しており、5月に入っても特にその傾向に変化はない。

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根拠なき州ごとのReopen

科学的な事実を元に、各州知事がReopenを決めたわけではなく、多くの州はこれ以上経済的な打撃を受けることを避けたいがために、シャットダウンを解除して、制限付きReopenに入っている。実際これによって、感染者数と死者数はまた急上昇する可能性を秘めている。いや、秘めているといった言葉ではなく、必ず起こりえる現象だと断言できる。

なぜならば、悲しい事ながら、多く人達は論理的に制限解除を受け止めず、感情的に自分が自由に行動したいという欲求の元で、これを歓迎している。また大統領や州知事が5月からReopenと言っているんだから、我々はそれに従うという、無責任な政府への責任依存が、これを支えていると思う。

テストやトラッキングをしていないから数が少ないだけで、感染が広がっているかどうかは誰もわからない

我々が住んでいるUtah州は共和党の政治家に支配されており、多くの州がシャットダウンをした時も州知事はそれを実施しなかった(勿論、郡ごとに制限が異なり、州知事以上に制限をして感染拡大を防止した郡もある)。それでも、現在発表されている感染者数は、6,251人で死者数は67人と非常に少ない。これはテストもトラッキングもまともにしていない以上、あまり信頼できる数字とは言えない。

また海岸沿いの州と異なり、Salt Lake Cityを除けば、多くのUtahの街は、都市と言えるほど人口が密集していないので、生活そのものが自然に「Physical distancing(物理的距離)」を守れるので、感染数は少ないのかもしれない。但し、昨日のスーパーマーケットを見る限り、バーケーションで訪れる人達(移動によるウィルスのデリバリ)もいれば、マスクを外して動き回る人達も見かけた以上、今後の感染拡大はかなりの規模になることは予想出来る。

病院のベッドはコロナに限らず、あらゆる病気の人達のためにリザーブすべき

マーケットから帰宅し、憤慨していた夫から、何年振りかに非常に悪い言葉(彼は私の前では滅多に使わない)が発せられた。夫は「なんて無責任なんだ。自分達の事のみを考えて愚かな行動をしている。重要なことは、これ以上、己の愚かしい行動で、病人のためのICUやベッドを使うといったことを起こさないようにするコト。物理的に働く必要のある人は、勿論そうすべきだし、それ以外のオルタナティブがある人は自宅から働けばいい。それとは別な問題で、消費行動や社会行動における各々の自分勝手で無責任な行いが、どれだけ病人やエッセンシャルワーカーの負担になると考えるアタマはないのか?」と怒鳴っていた。私もTotally agree with himである。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑱「パンデミックによる人々のPanic Buyingの中に潜む問題とは?」

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人々は州ごとの制限緩和をまだ信用していない

米国は5/4から州によって異なるが、コロナ禍による人々及びビジネスの規制緩和を実施し始めた。私の実感レベルは、まだまだこのパンデミックは収束とは程遠いし、自分自身が、次の感染数上昇の波を作る手伝いをしたくないということで、基本的には週に1度の食料品の買い出し以外は、不必要な外出及び人との接触は避けている。過去2か月間、毎朝6時起床、2時間自宅オフィスで働き、その後8:00から朝稽古(Jazzercise)をオンラインのオンデマンドで1時間して、また仕事に戻り、夕方17時には自宅のオフィスのデスクを離れる、といったルーティンを崩していない。

4/28-5/3の直近の調査では、一般の人達のコロナ禍に関する気持ちは、「最悪は過ぎたとする人が31%」、「最悪は今だとする人が30%」、「最悪はこれからやってくるとする人が38%」と、意見は分かれている。これはどこに住んでいるかという個人の居住エリア、さらにどんなコロナ禍による体験をしたか、など実感レベルによって、大きく異なる。

以下の表は、同調査で「自分が居住する州でどんなビジネスを再開すべきか?」という質問への回答である。再開を望むトップは、ゴルフコース41%で、以下は順に小売店舗34%、理髪店・美容院31%、銃販売店29%、レストラン内での外食26%、ネイルサロン25%、ジム22%、映画館劇場18%と続く。

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ゴルフコースの41%は、戸外で運動しながら物理的にソーシャル可能だということで、2 mのPhysical distancingを取りながらエンジョイできるので、トップに上がる理由は分かる。但し、最初にパンデミックの影響が大きかったレストランに関しては26%と低い数字である。これは、飛沫が飛び交い空気感染の恐れが高いレストランに関しては、お客は行きにくいのが現状で、今後ビジネスを再開しても、実際に以前のように顧客が来るかどうかは難しいところである。また、今後も引き続き経済的な不安を抱える消費者は、自宅待機中に外食がもたらす価値以上に、自宅で食事をする楽しさ、快適さ、便利さ、経済性などを再認識した可能性も高い。

Panic buyingで新たに注目される急増した銃セールス

多分、日本の人達は、この表の4番目に入っている銃販売29%を見て、大いに首を傾げると思う。「なぜコロナ禍で銃を買いたいのか?」という疑問は、以下のNY Timesの月間の銃セールスの推移を見ると理解しやすいと思う。

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コロナ禍によって「Panic buying」状態となったアメリカ人は、トイレットペーパーや缶詰のみならず、2020年3月のたった1か月で新たに190万の銃を購入した。これは過去の月間銃セールスの中で、2013年1月のObamaの再選と2012年12月小学生20人を含む26人が殺されたSandy Hook Elementary Schoolの大量銃撃事件に次ぐ、2番目に大きなセールス増となっている。当然に、銃購入の際のバックグランドチェックも急増しており、2/23から3/31までの銃セールスのレベニューは、対前年比792%増と跳ね上がっている

アメリカ人は、ハリケーン・地震・竜巻などの自然災害、Obama政権誕生や再選(銃規制を主張していた)、更に学校やコンサートなどの大量銃撃事件などが起こるたびに、銃砲店に駆け込む。

アメリカ人の銃カルチャーは「自衛」という発想で歴史的にも深く根付いており、銃を所持することは憲法が保障する権利として、多くの人がそれを強く主張する。この銃カルチャーの根底に潜むサイコロジカルな感情の中には「政府ですら必ずしも自分を守る側にいつも立っている訳ではなく、時には自分達に襲い掛かる可能性もある。自分と自分の家族を守るために、自衛の手段として、銃は必要である」という歴史的に構築された政府への懐疑的な見方も潜む。

過去のパンデミックではここまで銃セールスは増加していなかった。

今回のパンデミックのサイコロジカルなプレッシャーーは、今までに例を見ない形で、人々を心理的に追い込んでいる。何故か? 

ここから私の考えだが、20世紀が構築した薔薇色の世界ともいうべき「グローバル経済及び社会」が如何に脆弱かということを、2020年コロナが立証してしまったからではないか? パンデミックは、「ヒト」と「モノ」の移動を停止させて、世界市場に大打撃を与え、原油や株価の暴落を引き起こし、「カネ」の流れも止めてしまった。その間、Fake newsやPropagandaも含めて「情報」だけは世界中を駆け巡り、人々の不安をより増幅させている。

今日発表された米国の失業データによると、先週更に320万人が失業保険を申請し、過去7週間で合計3,300万人以上が失業した。州によっては就業人口の25%が失業してしまったともいう。

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医療崩壊も然りだが、2か月前まで現大統領は、米国の薔薇色の経済の強さと失業率の低さを謳歌し、己のリーダーシップが、この薔薇色の米国社会を牽引していると豪語していた。彼が描いた「砂上の楼閣」は、あっという間に崩れ、人々は今の生活、或いは3か月後の暮らしを、どのように切り抜けるのかと、異常な不安に苛まれている。これは人々が過去を振り返っても例のない状況で、アメリカというInstitutionが如何に脆く脆弱かという疑問はもたらし、政府や州や企業に頼れない以上「自衛強化(銃購入)」に走ると、考える人を創出してしまったのではないか? と思う。

メンタルヘルスの悪化も考慮すべき

私が一番心配するのは、こうした人々の不安を逆手にとって、それを更に煽り、「新たな敵(例えばアジア人へのヘイトクライム)」をこしらえて、暴力による解決を先導しようとする集団やグループの動きである。彼らは、言葉巧みに密やかに、恣意的な情報を流して、自分達の仲間として、獲得したい人達を誘導する。殆どの銃の所有者及び購入者は、武器としての銃というよりは、射撃やハンティングなどの趣味、或いは牧場や農場経営で野生動物から家畜を守る自衛のためなど、銃撃事件とは程遠い人達である。但し、そうした人達でも、コロナ禍で切羽詰まった人間に自宅を襲われるといった危険への備えは考えていると思う。

パンデミックはメンタルヘルスの弱い人達を、さらに不安に陥れる可能性があり、そうした人達が上述したグループなどと接触したり煽られたりすると、思いもかけない事件が起きる。DVの増加やオピオイドやその他の薬の中毒患者の過剰摂取も増えており、メンタルヘルスの悪化は否めない事実である。様々な角度で、このパンデミックを捉え、俯瞰で見ながら、出来る限りPositiveな気持ちになる必要がある。「パンデミックは、必ず収束する」、このマントラを唱えて、Panic buyingといった行為は避けることを勧める。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑰「パンデミックは、結局人間社会の大変革を強いるトリガーとなる」

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最近2人の感染症の専門家の記事を読んで、思わず人類の文明と疫病の関わり方を考えた。以下の文章は、元国立感染症研究所室長の加藤茂孝さんと海外勤務健康管理センター勤務の感染症専門家の濱田篤郎さんの2人の分析記事、Wikipediaなどからの抜粋・引用・まとめで、自分のアタマを整理するために、書き留めておく。

人類史は感染症とのやり取りに彩られている。

人類史は、誰もが知っているように感染症との闘いである。歴史上、人類が大移動する時に、パンデミックが存在するコトは、多くの感染症の専門家に指摘されている。特にペストは、およそ300年周期で、有史以来過去4回のパンデミックを人類にもたらしている。

1) 6世紀の「ユスティニアヌスの疫病」(8世紀末迄続いた):東ローマ帝国のユスチアヌス帝が大ローマ帝国復活をかけて、侵略戦争を繰り広げている頃、首都コンスタンチノーブル(現イスタンブール)では、日に1万人近い人々が死亡し、東ローマ帝国の人口の40%の2,500万人が死亡。

2) 14世紀の「黒死病」(1340年代に始まり、オスマン帝国では19世紀半ば迄続いた):中世の黒死病は全世界で8,000万人から1億人が死亡

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3) 17世紀の「ロンドン大疫病」:1665年にロンドンで大流行して、年間7万5,000人、当時のロンドンの人口のほぼ4分の1が死亡。

4) 19世紀末から始まる4回目の大流行(20世紀迄続いた):ヨーロッパに達することはなかったが、アジア、アフリカだけでなくアメリカ大陸にも波及した。

4つのペストの巣窟

世界には、以下の4箇所のペストの巣窟(ペストサイクルが回転している地域)があり、この巣窟に人間が侵入したり、あるいはネズミがそこから大量に移動することで、流行は世界各地へと拡大していった。

1)アフリカ中部の大湖地帯:ここから6世紀のパンデミックとなる。

2) 中央アジアの草原地帯:ここから中世の黒死病の流行が勃発した。この時代は、モンゴル帝国により中央アジアに草原の道が築かれ、人間が巣窟へ容易に侵入できる状況になり、ペストの主な標的となるクマネズミも巣窟からヨーロッパ方面へ大量移動した。

3) 中国とミャンマーの国境沿いの山岳地帯:19世紀末の大流行はここから始まる。

4) 北米の砂漠地帯:4回目の世界流行の果てに新たな拠点を築いた。

ペスト菌の本来の意義は、ネズミの個体数を調整する生態系のメカニズム

海外勤務健康管理センター勤務の感染症専門家の濱田篤郎さんがこうしたパンデミックが起こる原因を以下のように説明する。

「生態系の中で食料不足や個体数の過剰などがおこり、ある生物種の存続が困難になると、その生物種は別の生態系に移動する現象をおこす。さらに、それでも存続できなくなると、集団自殺行動をとることもある。ネズミであれば、次々と川に飛び込んで自殺するわけだが、これは「ハーメルンの笛吹き男」に出てくる状況と極似している。個体数が増えすぎたり食料不足になると、ネズミという生物種を存続させるために、ペスト菌がネズミの殺戮を開始する。すなわちペストサイクルが過剰に回転を始める。こうして、人間がサイクルに接触する機会も増加し、それとともに、ネズミは移動という方法をとるため、巣窟の外にある人間社会にも流行が拡大する。これが300年周期で繰り返される原因ではないか?」

黒死病がもたらしたものは?

ルネサンスへの道、ペスト医師の登場

黒死病の頃には、ペストはノミの吸血感染から空気感染に変化しており、当時の人々にとって、患者に近づくだけで感染し、瞬く間に死んでてしまうという現象は、恐怖そのものだった患者に近づくと感染するという経験から、家族は看病をやめて患者を放置し、放置された患者は、まだ息をしている瀕死の場合でも、近づくのを嫌がる人達に、死体として処理され、生き埋めにされるという悲惨な状態が起きた。

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その頃、ルネサンスの作家のボッカチオは、故郷のフィレンツエに戻るが当時12万人の人口が僅か2万人にまで激減した。ここで、ボッカチオは代表作の「デカメロン」、ペストに脅えて郊外に逃避した男女10人が語る好色艶笑譚を執筆し、極限の恐怖状態のため、快楽と官能的な喜びに溺れる者を描いた。

中世の大流行の後に、巷にはペスト医と呼ばれる医者が出現する。感染を防ぐために、彼等が纏う服装は、全身を皮の衣服で包み、顔には覆面をかぶる。それは、鼻と口に鳥の嘴のような突起をもつ恐ろしい覆面だった。この嘴の部分には、空気を洗浄する目的で香の強い薬草を入れていた。目の部分には、視線を合わせないように覆いがされていた。

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ペスト医の1人として、16世紀のフランスで名声を博し、予言者として著名なノストラダムスがいる。 彼は1529年に大学の医学部を卒業し、南フランスで幸せな結婚生活を送っていたが、間もなく妻と二人の子供がペストによって死亡してしまう。この試練を経て、彼はペスト医としての仕事に没頭する。ペストの予防に関しても、土葬をやめて火葬を推奨するなど、数々の画期的な提言を行っている。

ユダヤ人迫害、宗教改革、農地改革と社会が大きく変化していった

当時ペストの原因は誰もわかっておらず、悪魔が毒をまいたと言われていたが、悪魔は見えないし、毒も見えない。そこで人々が目をつけたのがユダヤ人だった。ユダヤ人は教典に忠実で、規則的で禁欲的な生活を送っていたため、ペストにかかる人が少なかった。それを盾にとって「あいつらは生き延びている。きっと毒をまいたに違いない」として、ユダヤ人を襲い始めた。当時からすでに裕福であったユダヤ人はお金も奪われて、ポーランドやリトアニアに逃げた(逃げたユダヤ人の子孫たちが、その後ナチスドイツによって迫害される)。

またキリスト教のローマ教皇の全盛期であったが、そのローマ教皇が祈ってもペストは治まらず、医学担当の神父たちも全然治せないといった現実に対して、人々は不満を持ち始め、それはその後の宗教改革へとつながる。

土地制度は当時は荘園制で、地主(領主)が農奴に土地を貸し付け、農作物を納めさせており、農奴はいわば奴隷的な身分だった。しかし、ペストにより農奴が一気に減り、荘園制が次第に維持できなくなり、農奴は待遇改善を要求し始め、後に賃金を得て労働する賃金労働制へと移行していく。

このようにペストがもたらした社会への変革は、中世から近世へと移行する大きな原動力となり、今と違って、社会は100年から200年かけてゆっくりと変わっていった。

パンデミックは、結局人間社会の大変革を強いるトリガーとなる


歴史が物語るように、パンデミックによって、人々は従来の既得権に守られた既成概念や因習・旧習など、「変えられないと思っていたものを変える」コトが可能となる。加藤茂孝さんは、今回の新型コロナは人間にとっては厄介であるが「賢いウイルス」だという。

「過去のSARSとMERSは感染するとみんな重症になり、どこに患者がいるかすぐにわかり、その人を隔離すれば、それ以上広がらなかった。だから、どちらも数カ月から半年で終息した。ところが今回の新型コロナは、重症化するのはわずか20%で、あとの80%は症状がないか、あっても軽い。そうすると、どこに患者がいるかわからないから隔離できず、その間に世界中に広がってしまった。私は欧州で広がり始めた段階から、このウイルスは流行を繰り返して、最終的には人類に定着すると思っています。定着とは毎年流行するということです。言い換えれば、流行しても誰も意識しなくなる。そうすると、次第に集団免疫が確立していきます。みんな免疫を持つようになり、流行する規模が減って、最後には風邪ウイルスのように流行しても誰も意識しなくなっていくでしょう。今のように大変なのは今年1年、あるいは来年もいくか。いずれにせよ、その1、2年の話だと思います。¥

ポストコロナは人類にとってのOpportunityだと思う

英語で隔離や検疫を意味する「quarantine」は、イタリア語の「40日」という言葉が由来。中世の黒死病のパンデミックの頃、ベネチアでは、船が港に到着しても、40日間は港の外に待たせて、船の中の様子を観察したことから始まった。この意味は感染症を考える時に、大きな意味を持ち、その後その実施活用によって、多くの人達への感染を防いでいる。この例をひくまでもなく、2020年に起きたこのコロナ禍は、21世紀に生きる人としての生き方や暮らし方、働き方、社会構造、経済構造、物流、環境などなど、全ての側面で、みんなが立ち止まって考える機会を提供している。

本当に必要なものは何か?優先順位はどうつけるのか?市場なんて実に幻想に近い人々の思い込みで成立しており、簡単に崩れてしまうんだ、セーフティネットがなぜ今ないんだ?、なんでこんな政治家を国の舵取りに選んだのか?なぜ人は密集して住んでいるのか?医療制度を何でもっと真剣に考えなかったのか?など、考えることは山ほどある。

でも、これはとっても大切なことで、まず真剣に考える、コトから始める。今まで直視するのが嫌で、目を背けていたことを、辛くても見る必要がある。例え、経済的には失業や倒産といった厳しい試練に立ち向かうことを余儀なくされても、それを乗り越える知恵を絞る時が来ている。

自戒を込めて、今はそう思っている。知恵を絞って、ここを乗り越える。パンデミックは必ず収束する、それが1年なのか2年なのか今は分からないけれども、その後には必ずチャンスが待っていると思うし、それを信じている。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑯「Zoom疲れ」があってもZoomがないよりはいい

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断り切れない付き合いがもたらす「Zoom Fatigue(Zoom疲れ)」

「Zoom Fatigue(Zoom疲れ)」の記事がグローバルのいろんな国で目に付く。自宅勤務となり、本来ならば通勤や無駄な会議に割いていた時間がセービングされて、もっとゆとりを持って24時間を使えるはずであったが、物理的な社会生活が遮断された代わりに、それらを全てオンラインに移行してしまったため、多くの人達が多忙を極めている。自宅にいるので幾らでもスケジュールを詰め込めると思い、仕事に限らず、オンラインで音楽・映画鑑賞、スポーツ観戦、さらに飲み会といったものをどんどん入れ込んでいる。

米国は日本とは異なり、「上司や同僚との付き合いのために飲む」という習慣はない。まして幾つかの大都市を除いて、公共の交通機関のない米国では、車通勤が主要な交通手段である以上、会社の帰りにちょっと1杯といった行為はまずありえない。自宅待機がもたらした新たな米国の悩みである「Zoom疲れ」は、単純に言うと「車だから」とか「子供のピックアップがあるから」、「夜は家族と一緒に過ごす時間なので」といった言い訳が聞かなくなり、多くの人達がずるずると「Zoom Happy Hour」に参加して、断りにくい社交が増加したことに起因する。

「Zoom飲み会」の難しさ

自宅で行われるZoomでの飲み会は、意外と難しく、多くの人達は、思っていたほど単純に楽しいものではなく、色んな不備をソーシャルネットワークで投稿している。特に指摘されるのが、並列的に複数の会話が進行出来ないという点。このため、1つの話題のみを声の大きな人(私のようなお喋り)が話し続けて、尚且つみんな話題が途切れて沈黙になるのを恐れるので、MCのような飲み会の進行的役割が必要になるという点。これは、私も末娘のZoom weddingに参加したが、30名以上の参加者は、1人を除いてみんなミュートにしており、結婚式の流れの中、司会者の長女が画面から外れると、気まずい沈黙が流れ、それをカバーするために、参加者の1人は勇気をもって発言していた。

人は、なぜF2Fで会って飲みたいのか?

日本とは時差があるために私自身はマジな「Zoomの飲み会」というのはやったことがなく、コーヒー片手のZoomのお喋りのみだが、他の人の投稿を見て思ったことは、要はインターネット経由では、仲間と一緒に楽しくお酒を飲むということは、非常に難しいという点である。理由は、モニター経由で顔を見せあっても、物理的な近距離で顔を見るのとは異なり、「表情」が読めないためである。なぜ相手の「表情」がそんなに重要なのか? 

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The Naked Ape: A Zoologist's Study of the Human Animal Paperback – 6 Oct. 2005

人類学者のRay Birdwhistell は、人間は異なる顔の表情を25万通り作ることが可能だという。またボディランゲージの専門家のAllan and Barbara Pease は、人の主張が交渉に与える影響のうち60%から80%はボディランゲージによるものとしている。即ち、非言語的コミュニケーションの中心である「顔の表情」が、実は物理的な飲み会を司る重要な役割を占めているという点である。例えF2Fで沈黙が訪れても、参加者達はお互いの表情を読み込んで、それは「心地よい沈黙」だと認識できる。また当然のように、並列的に複数の会話は流れるので、1つの話題に固執することなく、多数の話題のストリームが自由に流れる。

要は、人は美味しい食事とお酒を潤滑油として、心を開いて、参加者の顔、声、動作を見ながら、お互いをもっと知りたい、或いは自分のコトを知ってもらいたいという欲求のもとで、F2Fで会ってお酒を飲みたいんだと思う。スクリーンでは、この非言語コミュニケーションが見えにくいし、今のヴィデオ会議のツールの作り方が、F2Fの飲み会のフローの再現できない。

それでもZoom飲み会があって良かったと思う

でも自宅待機の中で、例え限界があるにせよ、インターネット経由で誰もがライブで簡単にヴィデオチャットできるツールが、今この時期にここまで浸透していたことは、実に有難い。人間にとっても最も過酷な刑罰は、「孤独」である。刑務所で服役中の囚人をより懲らしめるために「独房(solitary cell)」に入れる場合がある。通常人は「孤独」に耐えられず、改心を誓う。

人類は、他者とのコミュニケーションを求める欲求によって進化してきた。今回のコロナ禍は、もしかしたらこの人類の欲望である「他者とのコミュニケーション」に違った意味での進化をもたらし、より良いコミュニケーションの仕方やツールの開発をもたらすかもしれない。

来週の夕方18時の日本の友人とのZoomお喋りは、コーヒーではなくワイン片手にしてみようかな。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑮「世界中でパンデミック・ドリームで悩んでいる人がいる」

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私と夢の関係

私は毎晩必ず夢を見てそれを克明に覚えている。夫との朝の会話は「今日の夢はこれこれこんな感じで、結果こうなったの」でいつも始まる。良くカラーの夢や同じ夢を何度も見るし、さらに夜中夢の途中で目が覚めて、もう一度今見ていた夢に戻りたい時は戻れるといったことも起きる。また、虫の知らせのように翌日起こることを予知したような夢も見る。特に予知的な夢見に関しては、母方の血筋から来ているのかな?という風に思っている。

母は伊豆大島出身で、親戚は伊豆大島の大宮神社の神主の家系で代々続いている。この大宮神社は「御神火(活火山の三原山)」を鎮めるための神社でもあるので、パワースポットとしても知られている。また母の従妹は神がかりの女性で新興宗教の開祖となった人でもあり、理屈では簡単に説明できない何かが母方にはある。私が子供の頃、母が「昨日こういう夢を見たから今日大島から連絡が入る」といったことを良く話していたが、それは殆ど当たっていた。また私も同様な予知的な夢を見る機会がある(何年も会っていない友人が夢に出てきて病気を私に告げて、翌日彼の闘病と死を知った)。

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パンデミックと夢の関係

以下の夢の説明は、National Geographicの「新型コロナで奇妙な夢や悪夢を見る人が増加、理由と対処法は」という記事の中からの抜粋で、今世界中の多く人達の間で起きている「corona virus pandemic dreams」現象について、紹介する。

夢の役割

夢の内容や感情は、起きている間の幸福感と関連しており、象徴的で奇妙な夢には、強烈な記憶や日々の心理的ストレスを、潜在意識のなかだけで安全に和らげる効果がある。一方で悪夢は、起きている間には自覚していない不安を知らせる危険信号という見方もある。

覚醒時の活動が、夢の内容に影響を与える記憶のスライドを作り出すことは、多くの研究で示されている。日中から持ち越した感情は、夢の内容やその感じ方に影響しうる。フィンランドの研究者達は、心が平穏だといい夢を見やすいこと、反対に、不安は「夢への悪影響」をもたらし、恐怖や動揺する夢になるとデータで証明している。

夢は幻覚とよく似ている。夢を生み出す神経生物学的な信号と反応は、幻覚剤で引き起こされるものに近い。幻覚剤は「セロトニン5-HT2A」と呼ばれる神経受容体を活性化させ、これにより脳の「背側前頭前野」と呼ばれる部分が働かなくなる。その結果、意識によって感情が抑えられなくなる「感情的脱抑制」という状態に陥る。これは特に、夢を見るレム睡眠で起こることと同じ。このプロセスは毎晩起こるが、殆どの人達は見た夢を覚えていない。

「corona virus pandemic dreams」現象

今世界中で様々な研究チームが夢を分析しているが、多くの人達が「コロナウイルス・パンデミック・ドリーム」という新たな現象を経験しているという。パンデミック・ドリームは、ストレスや孤立、睡眠パターンの変化によって、通常の夢とは一線を画す否定的な感情の渦に彩られている。夢研究の専門家でBoston University School of MedicineのPatrick McNamaraは、「我々は通常、激しい感情、特に否定的な感情を、レム睡眠や夢を利用して処理している。今回のパンデミックが、多大なストレスや不安を生み出していることは明らかである。このパンデミックのさなか、孤独やストレスが高まるせいで、夢の内容が影響を受けたり、夢を覚えていることが多くなったりしている可能性がある」という。

ストレス源に「近い」ほど悪夢が増える

2020年3月から進行中のフランス、リヨン神経科学研究センターの研究によると、今回のパンデミックは、夢を思い出せる回数を35%増加させ、悪い夢を通常より15%増やしているという。イタリア睡眠医学会が進める別の研究では、感染拡大のさなかに閉じこもり生活を強いられたイタリア国民の夢を分析した。回答者の多くは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と同じような悪夢や頻繁な目覚めを経験している。現在進行中の研究結果からは、パンデミックの脅威に近い人、つまり医療従事者や感染拡大の中心地の住民、あるいは家族に感染者がいる人ほど、新型コロナウイルスに影響された夢を見る可能性が高いことが示唆される。

じゃあ、悪夢を見ないためにはどうすればいいんだ?

私が考えるポイントは、まず自宅待機で起こる諸事情をネガティブに捉えず、全て裏返しにしてポジティブに考えること。「家族と一緒に過ごせる時間が増えて嬉しい」、「子供の勉強も他人事にせずに自分で見てあげられる。これで子供の学習能力も上がる」、「妻や夫さらに子供が一緒になって家庭で作る食事って、なんて美味しいんだろう」、「通勤時間がない分、普段できなかった読書(ちょっと難しい書籍)や音楽(今まですっかりやっていなかったけど楽器演奏を始める)など自分の好きなことに時間を使える」、「自宅で簡単に育てられるハーブなどの手づく野菜は美味しく便利」、「外出しない分、お金のセービングが出来る」、「オンデマンドで自分の好きな時間に自宅でエクササイズが可能」等々、どんな小さなことでもポジティブに考えれば、人は幸せになれる。また家族の間で「ありがとう」を連発し、ギャグやコントで相手を笑わせようとすると、必ず楽しく嬉しくなる。こういう「はっぴい度」を意識してあげる工夫をし始めると、悪夢を見る頻度は自然と下がると思う。

要は、パンデミックがもたらす出来事をポジティブに捉えて、そのBenefit & Advantageをしっかり認識することが、悪夢がアタマに入ってこない防波堤になるんだと思う。長丁場でみんながしんどいと思うけど、「習うより慣れろ」で、状況を拒むのではなく受け入れて、そこに楽しみを見つけてエンジョイすることが大切だと思う。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑭「Post Corona Eraのために今考えておくこと」

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Paper or Plastic?

25年前米国に移住した時、初めてスーパーマーケットのキャッシャーに「Paper or Plastic?」って聞かれて、てっきり、「支払はクレジットカードか紙幣(現金)か?」と聞かれたと思い、「プラスチック(カード)」と言ったことを突然思い出した。勿論これは買ったものを紙袋かプラスチックの袋のどちらに入れるのか?という意味だったが、何故か、私は即座に支払い方法だと思い込んだ。当時は、キャッシュ(現金)、チェック(小切手)、デビットカード、クレジットカードの4種類しかなく、多くの人達がチェックブックを取り出して、金額を記入し、キャッシャーはそれをレジスターのマシンでVerifyして受け取る、という古き良き時代(或いは物凄く時間のかかる時代)だった。

非接触モバイルペイメントの支払いが要求される時代が来るとは

今、米国では兎に角、人との接触を避けることが最も重要な取り組みとなっている。キャッシュもクレジットカードもデビットカードも接触型の支払い方法なので、非接触のApple Pay、 Google Pay、Samsung PayといったモバイルペイメントがPreferという店舗が出てきている。これは、消費者にかなり劇的な行動変容を求める大きな動きと言える。現在、キャッシュを断ってカードのみの決済の小売店舗は多いが、顧客がカードをマシーンに差し込んだ後、キャッシャーは必ずマシーンのパッドをワイプして消毒するという手間をかけている。キャッシャーは、透明の仕切りで顧客との接触は避けているが、多くの手間と時間が支払いのやり取りでかかっている。

米国2023年近接モバイルペイメント利用額は2,200億ドルに達する(2019年9月のeMarketerの予測

eMarketerによると、米国の2019年の近接モバイルペイメントの利用額は1,000億ドルに達すると予想されているが、これは1人当たり年間平均支払額$1,545を意味し、近接モバイルペイメントの支払額は対前年比24%増。利用者は6,400万人(9.1%増)でスマートフォンユーザの30%にあたる。

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Starbucksは、この非接触モバイルペイメントの先駆けで、市場の25.2%を占めているが、最有力ペイメントは何といってもApple Payである。2019年の米国非接触モバイルペイメント市場の30.3%を占め、2019年末までにApple Payは、米国小売店舗の70%迄使えるようになると予想されている。ペイメントに関しては、かなり保守的な私ですら、このコロナ禍でモバイルペイメントを要求された場合を想定して、Optionとして、遂にApple Payをセットアップした。

「Post Corona Era」では不必要な接触は避けるという心理が働く

これらの数字は全てコロナ禍の前の予測で、上述したように、現在のコロナ禍で支払いに限らずあらゆるコトに、非接触を要求されている。この流れで行くと、結果非接触のモバイルペイメントを多くの人が使い始めて、多分その便利さと手軽さによって、これらの数字は大きく増えてくると思う。またPost Corona Eraでは、非接触モバイルペイメントの利用場所が急速に拡大し、アメリカ人は、支払いアカウントをクレジットカードやデビットカードに紐づけて、手軽にどこでも、非接触モバイルペイメントを利用して、以前と同様に買い物をし始めると思う。

ひさみが考える消費者の行動変容がおこる「心技体」

今回のパンデミックは、世界中がいきなり鎖国のような状態となり、社会・経済活動が停止するという、今までの規模では考えられない制限を、人々に課している。勿論国ごとにその制限レベルの差はかなりあるが、「行動に制限をかけられて生活する」という形を強いられるのは、かなり長く生きてきた私でもあまり記憶がない。消費者の行動変容が起こるには、心技体ともいうべき、3つの要件が整わないとなかなか起きない。非接触モバイルペイメントの浸透拡大の、心の部分は「人と接触しないですむし、簡単で便利で速い」、技の部分は「NFCシグナルに機能する新たなPOSシステムの拡大で利用場所が浸透拡大している」、「体」の部分は「自分の身体の一部としていつも持ち歩くスマートフォン利用」といった点が挙げられる。

「Post Corona Era」には、このペイメント以外に、様々な消費者の行動変容が起きてくると思うが、マーケターとして、今必要なことは冷静に人々の心理や行動を見つめて、潮目を読む、これが肝だと思う。潮目は変わる前に読まないと意味がない。潮目を読むためには、1人のマーケターとしての視点は勿論であるが、より重要なのは1人の消費者としてどのように生活を考えるかという点で、この2つはどちらが欠けても、潮目は読めない。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑬「リーダーの資質は有事に証明される?」

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ジェンダーニュートラルの私としてはこういう評価は避けたいけれど

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個人的にはあんまりこういう風にジェンダーで切りたくないけど、Forbesはコロナ禍の管理をうまくやっている国のリーダーの共通点は、女性であると言っている

この記事の中のコロナ禍による死亡者数は4/12現在で、これを4/13現在でアップデイトしてみると、こんな感じ。ドイツ3,294人(感染者数131,359人)、デンマーク299人(感染者数6,511人)、ノルウエイ139人(感染者数6,623人)、フィンランド64人(感染者数3,161人)、ニュージーランド9人(感染者数1,366人)、アイスランド8人(感染者数1,720人)、台湾6人(感染者数393人)。

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これらの国々は、人口やら国土面積、さらに地理的条件などが、大きく異なるから簡単に比較できない。記事では、ドイツは上手く言っていると評価しているが、この感染者数と死亡者の数を見ると、そうとは言い難い。

台湾総統及び閣僚の手腕と人間性は他の国は中々真似できないほど優れている

Forbesも認めているけど、私も同意するのは、台湾の総統の蔡英文(Tsai Ing-wen)の指導力、ジェンダーなんか関係なく、お見事だと思う。彼女の早期の決断と実行力、さらに感染者への接し方は、彼女の閣僚達も含めて、人間尊重の素晴らしさに満ちている。因みに、台湾は「一つの中国」原則を主張する中国の圧力で、WHOから排除されてコロナ対策では孤軍奮闘中だけれども、4/14の新規感染者は36日ぶりにゼロとなり、危機管理能力の高さが評価されている。また、WHOのテドロス (Tedros Adhanom) 事務局長は、先週自身がインターネット上で人種差別的中傷にさらされて「個人攻撃は台湾から来ている」と主張したことが発端で、蔡英文総統は彼の発言に強く抗議している。台湾の民間の有志は、New York Timesに事務局長の台湾への悪意のある主張に対して真実を訴える意見広告掲載の募金も始まって、4/14時点ですでに1900万台湾ドルが集められたという。

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By 總統府, Attribution, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48898316

また彼女以外にも台湾のコロナ禍の政府対策本部長を務める陳時中(Chen Shih-chung)は、不眠不休で対応に当たり「鉄人大臣」と呼ばれ、3月の世論調査で支持率は91%に達している。毎日の記者会見で質問が尽きるまで誠実に答え続ける姿勢と、思いやりに満ちたコメントが市民を安心させている。彼は「隔離対象者は肉の塊ではない。人間です。思いやりに満ちた制度を作り、社会で支えることが解決につながる」と話す。

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By 中華民國總統府 - This file has been extracted from another file: 02.25 總統出席「簽署《嚴重特殊傳染性肺炎防治及紓困振興特別條例》記者會」.jpghttps://www.flickr.com/photos/presidentialoffice/49582692888/, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=87823376

デジタル担当大臣を務める唐鳳(Audrey Tang)も、様々な手法やアイディアでコロナ禍対策を提案しているけど、日本人向けの自宅で簡単にマスクを消毒する方法をTwitterに公開したりと、自国や他国を問わない人間性の大きさにいつも感銘を受ける。

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By @daisuke1230. Cropped by KOKUYO (hist.) - Cropped version of File:20151013 成大開源月-唐鳳 PA130741 (22007412520).jpg, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=50960601

ジェンダーを超えて、リーダーの資質は有事に証明される

国を預かるリーダーの資質とは、有事の際の判断の適切さと決断の速さだと思う。ましてコロナ禍は、誰もが認めるように、Outbreakする前にどんな手を打つかで、その後の状況が極端に異なる。また「何を優先するか?」も大きなポイントで、私はこのブログシリーズで何度も言及しているが、「コロナ対策と経済救済は同時にできない」という点で、まずは食い止めることが最優先される。ジェンダーに限らず、こうした優先順位も含めて、リーダーが適切に素早く判断して、実施展開できた国は、コロナ禍管理の優位性を示している。 

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コロナ禍でのアメリカ生活⑫「末娘のZoom weddingに参加して」

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昨日突然末娘から、太平洋時間午後18時に、Zoom経由で延期していたWedding Ceremonyをするので、以下のZoomの情報にアクセスして欲しいというTextが入ってきた。この式の主催者(招待者)は長女で、PC、スマートフォン、タブレット、各々でのアプリのダウンロード情報とアクセス情報(勿論パスワードあり)を記した文面を、私達夫婦を含む、近しい家族宛てに同時Textしてきた。

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初のZoom weddingは参加者35組以上の大きなイベントとなる

もともと、娘は3/27にOaklandのCourtで結婚式を挙げる予定だったが、カリフォルニア州の自宅待機規制が始まり、F2Fでみんなが集まる式は、独立記念日の7/4に延期した。延期を決めた当時は、7月ならば収束の可能性があると思っていたが、米国の深刻化するコロナ感染状況とその収束の可能性の不透さから、結果、彼女達は、突然昨晩のZoom weddingを決めたらしい。

私達は、式の3時間前まで何もこのことは知らなかったので、せいぜいごく近しい近親者のみの気軽なものであると思っていたが、時間になってログインすると、末娘の実の母親(夫の前妻)から始まって、新郎側の父親、姉弟、友人達、新婦側の親族や友人と、カリフォルニア、ユタ、アイダホ、コロラド、オクラホマ、テキサス、フロリダ、マサチューセッツ、NY等々、全米に散らばる親戚友人達、合計35組以上が参加する大きな式であった。参加者の年齢も、下は3歳ぐらいから上は80歳代(末娘の祖母はZoomのアプリを孫のサポートで直前にダウンロードしたけれども、みんなの顔を見られるが自分の顔を画面に映すことは最後までできなかった)まで、みんなのメッセージが飛び交った。

みんなが泣いたZoom wedding

長女が全体をプロデュ―スしコンダクトして、新婦新郎の登場から始まり、新婦のスピーチは、彼女が愛した亡くなった家族・親戚1人1人とのエピソード(私の父と母の名前も彼女の祖父母として語られた)が感動的で、さらに長女が2人の結婚を告げる言葉によって、指輪の交換と誓いの言葉が述べられた。私も泣いたし、多くの親戚・友人も涙する、素晴らしい結婚のセレモニーだった。

新郎はインド系アメリカ人で、私達は、今回初めて彼の父親を含む家族の顔をZoomで見て、彼らの言葉を聞いた。彼の家族のことは殆ど知らないが、2人とは昨年一緒にSF Bayでセーリングしており、新郎は昨年の甥のお葬式にも参加しており、人柄は熟知している。また、彼らは昨年自宅を購入して一緒に住んでおり、法的な手続きが遅れているが、実質夫婦である。

そんな2人であるが、改めて家族や友人達の前で夫婦となることを誓い、みんなに祝福されて、とても嬉しそうだった。新郎の「最初のデートの時以来、彼女を愛していた」という言葉は、親として何よりも嬉しい。娘は、ついに「人生のAnchor(錨)とも言うべきパートナー」を見つけたらしい。

Zoomには大至急セキュリティ問題解決を図って欲しい

ヴィデオ会議サービス「Zoom」は、2019年に上場したカリフォルニアのスタートアップによって運営されており、2019年12月時点では1日の利用者が1000万人程度だったが、コロナ禍で多くの人達がリモートワークに移行したことから、2020年3月には1日の利用者が2億人にまで増加している。誰でも簡単に使えるというアドバンテージで急速に成長し、そのために色々な問題が噴出しているが、最も大きな問題はセキュリティ問題である。但し、米国のように時差もあり、人々が広大な土地に散在して住む国では、F2Fで会えない状況下、この手のオンラインプラットフォームは必要である。そのためにも、Zoomには、大至急セキュリティ問題やそれ以外の多くの問題の解決をお願いしたい。

Zoomによって、より実感できるF2Fのリアルの良さ

多くの人達がコロナ禍の規制によって、人生の重要なイベントが出来なくなっている。それを考えると、何はともあれ、みんなが同時に1つのイベントにライブで参加して、顔を見ながら言葉を交わせるというのは、素晴らしいことだと思う。F2Fで会えないからこそ、よりF2Fの良さを実感する。早くこの状況が収束して、みんなが安心して、フィジカリーに会って、顔を見ながら話せる日を来ることを、心から祈っている。

PS①:娘がLast nameを変えてしまった

Zoom weddingの後で、私のPrivateのFacebook(私の英語の本名のアカウントで家族と親戚のみに公開している)を除くと、何と娘のLast nameが新郎のLast nameに変わっていた。彼らは、これから子供を持ち1つの家族として生きて行くので、子供のProtectionを考えれば当然の変更だけど、何となく末娘は変えないような気がしており、実際にインド系の名前に変わっていて、軽いショックを受けた。単純に、ちょっぴり寂しいということだけど、Zoom weddingより、こっちのほうに驚いたのが私の本音である。

PS②:そう言えば3年前の母のお葬式に夫はFacetimeで参加した

Zoom weddingをやった後、急に夫が3年前の母の山梨の菩提寺でのお葬式に、米国からFacetimeで参加したことを思い出した。夫は我が家の菩提寺にはお参りしており、元ソフトウエアのエンジニアだった和尚さんとも懇意な間柄で、夫が葬儀に参加したいと言っていますがと、和尚さんに確認すると、勿論いいですよとなった。私のiPhoneでFacetimeを映したが、驚いたのはスーツの大嫌いな夫が、ダークスーツにタイという正装で葬儀に参加したこと。私が着替えたの?と聞くと当たり前だと言っていたのを思い出す。弟と私だけがフィジカリーに参加して、夫はFacetime経由でライブにアメリカから参加した。我が家は臨済宗妙心寺派で禅の家系だが、夫は人一倍禅に興味があり、公案などへの理解もある。和尚さんの読経も含めて、静かに執り行われた母の葬儀は、夫も「素晴らしい」と褒める、良いお葬式であった。母は兎に角、夫が大好きで会うたびに走りながら体当たりするように夫に抱きついていた。ヴァーチャルだから云々といったことは何もなく、夫と弟と私達3人は葬儀を共有できた実感した。ヴァーチャルだから云々は何もないと思う。今の世は、誰もが時空を超えて、コミュニケートできるという、大きなアドバンテージがある。勿論F2Fのリアルにはかなわないけど、制限のある時には、ヴァーチャルなテクノロジーを活用すればいいだけ。心をオープンにすればいい、と思う。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑦「Physical distancingと呼ぼうよ!」

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WHOが、今まで使っていたフレーズ "social distancing" の代わりに、新たに"physical distancing" を使い始めた。これは、医療関係者(フィジカル&メンタル両方の医師達)も、大いに歓迎していて、「正しいディレクション」だと喜んでいる。これによって、現在のコロナ禍の環境において、人々がとるべき行動がクリアになった。

WHO の疫学者のMaria Van Kerkhoveは、「パンデミックにおいて、重要なことは人と人の物理的な距離であり、家族、友人、知人など、愛する人達から社会的にディスコネクトすることを、言っているのではない」と、さらに「テクノロジーによって物理的に同じ部屋やスペースに居なくても、様々な方法でコネクトできるというアドバンスドの環境にいる」と言っているつまり、人と人の距離は少なくとも2m離れるということを、"physical distancing"と言っており、それが出来ない場合は、自宅で過ごすという生活となる。

1人の感染者の社会的行動が30日後何人の感染者を作り出してしまうのか?

以下は、陽性となった1人の人間が、他の人と接する行動を、「ノーマル、50%削減、75%削減」と、3段階に分けると、30日後に何人の人が感染するかを示したデータである。

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本人が陽性かどうかを知るかどうかに関係なく、感染者1人がノーマルに動き回ると30日後に406人、50%削減した場合は15人、75%削減した場合は2.5人の感染者を創出する。これを見ても、如何にPhysical distancingが重要なのかは一目両全である。

兎に角どんな場合でも人と物理的に接する場合は最低2mは距離を持つ

私の家の周囲では、小さな食料品のお店は、例えば店舗内には5名しか入れず、1人が買い物し終わったら、外で待っている次の人が中に入れる。外の行列も2mの間隔(床とか舗装された道路に)に、青の星やXマークで、お互いの距離が測れるように印がついている。またマーケットのような巨大な店舗は、始まりの1時間はシニア専用時間を設けているし、一般時間でも棚同士の間の通路も広く、またお客も最低でも3mはお互いに意識して離れているので、"physical distancing"はきちんと順守されている。キャッシャーには透明の仕切り板が設置されて、お客がカードを挿入する機械は、1回使用するたびに徹底してワイプされる。勿論Reusableの自分のバッグは持参できないし、カート置き場には担当者が1つ1つカートをワイプしている。

食品・医薬品・日用品といった生活物資は生命線なので、この買い物にはまとめてなるべく回数を減らしている(我が家はいつも週に1回だったので変わらず)。要は症状がなくてもテストをしていなければ、自分が陽性の可能性は十分あるので、他の人達にウィルスを運んで感染させないという責任感が根底にあると思う。そんな中でも、お隣さんとは5mぐらいの距離を保ちつつ駐車スペースでワインを飲んでお互いに近況をダウンロード、夫の4人の姉妹と父親と6人で、ヴィデオを駆使して同時(ユタ、アイダホ、テキサス、オクラホマ)に顔を見ながら話している。"physical distancing"さえ守れば、社会的には十分コネクトできる。

自宅勤務のコツ

日本の友人が自宅勤務の難しさを色々書いているが、私は既に20年近くテレワークをやっているので、仕事をする上での変化はそんなに極端にない。但し、唯一感じることは、外出に制限がかけられていると、翼をもがれたような「閉じ込められた感」を感じること。今までは翼(車)があり、どこへでも「自分が思った瞬間に」飛び出して行けたのに、それが出来ないという閉塞感がちょっとしんどい。

過去20年のうち15年ぐらい、夫は殆ど海外在住だったり毎朝通勤をするという仕事の形態で、実際に2人とも自宅勤務となったのは過去5年ぐらいである。最初は戸惑いがあったが、米国なので住宅事情が良く、朝夫と顔を合わせて挨拶し、昼間たまにキッチンで会い、夕方から一緒に夕食を作るというリズムを構築した。SFベイエリアの頃は、私のオフィスが2階で夫のオフィスはガレージ、今平屋だが、廊下を挟んで、私のオフィスと夫のオフィスがあるために、昼間はキッチンでたまに会うといった感じである。

この仕事と家族の間に最低限の距離感を構築することが、重要となる。"physical distancing"は、自宅勤務でも非常に大切で、仕事中は家族との間に2mいや出来れば5mぐらいの距離は、欲しい。特に現在子供も含めて家族みんなが常に一緒にいるとなると、ますます仕事スペースをきちんと確保する必要が出てくる。そしてもう1つ、状況の長期化に備えて、無理のない仕事と生活のリズムを構築することも重要となる。この状況は1-2か月で終わるという希望的観測は、現在の自分にはない。そのために、自宅待機の条例の中で、自分の生活と仕事のルーティンを作り、それを真面目にやり続けるつもりである。私は今も自宅で決まった時間にLive streamingで朝稽古(Jazzercise on demand )をしてる。勿論日本では、自宅でエクササイズができるという住宅環境は望めないと思うが、毎日定刻に何か身体を動かすことはぜひやった方がいいと思う。これはメンタルに大きな効果がある。

自宅勤務の4つのポイントを以下に記す

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1:働くための専用スペース「ホームオフィス」を作るために片付ける

2:自分を「働く自分」と「家にいる自分」と、2つに分ける

3:同僚と簡単にコンタクト出来るようにアプリを活用

4:頻繁にブレイクをとることを忘れない

物理的にも心理的にも「働くことと、家で生活するコト」を分けて、考えるのが自宅勤務の肝で、それが出来ないと生産性は上がらず、心理的にも追い込まれるので、くれぐれもこの点は留意してほしい。そして、焦らないこともとっても大切。私は日々の行動は物凄くせっかちだが、仕事に関しては粘り強く、絶対にあきらめない。プロである以上、「継続はチカラなり」をモットーに、前を見ながらずーっと歩き続けている。ちょっとぐらい辛いコトも、後になれば、忘れるくらい小さなコトとなることを経験上知っているから。

マラソン的な長距離走の思考回路で、ペース配分をしながら、走りぬく精神力が今は必要だと思う。どんなに長丁場でも、ゴールは必ずあるので、慌てる必要はない。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑤「ガイア(地球)は人類に対して、怒っているんだろうか?」

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トイレットペーパーをゲットした瞬間、クンタ・キンテ誕生状態となる

やった!夫がWalgreensでトイレットペーパーを2個ゲットして帰って来た。彼は、まるで狩猟時代の狩から戻った戦士のような得意顔で、どうと2個のロールを私に突き出した!我が家には神棚も仏壇もないけど、私はアフリカの大地にクンタ・キンテ(Kunta Kinte)が生まれた瞬間の如く(TVミニシリーズRootsの有名なシーン)、ロールを高く掲げて、一礼した。これで我が家もロールの在庫は9個となる。ふうう。

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Walgreensは1人当たり2個という制限を付けて販売しているので、これをこまめにゲットしていけば、我が家のロールは滞りなく在庫補充が可能となる。私は、常にペーパーの心配をしている訳ではなく、週に1度の食料品の買い物でも、まずは必要なものを補充するのみにして、他の人に迷惑をかける「買いだめ」は一切していない。アメリカの家には広いPantry(食料品を収納するスペース:部屋と言えるぐらい広い)があるので、大量の食料品が収納できてしまい、多くの家庭ではここにモノを溜め込んでいる。我が家はかなりスカスカで、夫も私も、最悪感染して隔離する状況になった時に買い物をしないで済むぐらいのスープの缶詰とかを、普段より多めに買ったぐらいで、モノ溜め込んでいない。注:以下の写真は我が家のモノではない

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とうとう日本もアメリカからの入国を拒否

日本もアメリカからの入国を拒否するくらいにアメリカの感染者数と死者の数は毎日うなぎのぼりである。以下のデータが示すように、感染者数でトップに躍り出たアメリカは、昨日14,904人が新たに感染して合計168,369人、死者は351人が追加されて合計2,934人が亡くなっている。勿論アメリカ以外のイタリア、スペイン、フランス、英国といった欧州と、イランの感染拡大も激化している。

まるで、地球(ガイア)の怒りが爆発して、これ以上地球の資源を無自覚・無尽蔵に食い散らかす人類への鉄槌の如く、この疫病は、ロシアも北朝鮮もアフリカ諸国も南半球の国々でも暴れ始めている。

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地球(ガイア)は怒っているんだろうか?

私の友人の山本一郎さんが、ブログでこう書いている。「人類社会の経済活動が低迷すれば、環境問題は解決するんです。グレタさんが各国首脳を激しく論難していた環境問題は、短期的にコロナウイルスが強制的に解決してくれました。あとは、その先に不幸な感染者や経済破綻者たちの望まない死が頻発しないことを祈るのみであります。」

コロナ禍生活が始まり、夫も私も「今一番喜んでいるのは地球そのものだろうね。人間が社会経済活動をスローダウンあるいは停止すれば、地球の環境リソースへの負荷が極端に減るもんね」と話したことを思い出す。以下のNASAの中国の大気汚染が、コロナによる人間の活動停止で、如何に減ったかを画像が如実に証明している。

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人々は、生活と称して、地球の環境に負荷を掛けながら、生きているかが、この画像を見れば一目瞭然である。

「疫病」って人間が環境(=地球)に負荷をかけ始めると発生する?

今回のコロナ禍は、古来から「疫病」って呼ばれている現象で、長い人類の歴史はこの「疫病」との戦いで、たまたま今回のようにパンデミックと言われる規模で、過去100年ぐらい発生してこなかったから、今右往左往している。これはある意味、中性子爆弾に似ていて、建物は破壊されずに人間だけが失われるという、人類が最も苦手とする戦い。理論的には、「ウイルスを終息させる」か「人類全員がウイルスにかかり病気になって免疫を持つ」しか解決方法はなく、そのどちらも簡単には出来ないし、終わらない。

以下に世界的歴史学者・哲学者のYuval Noah Harari「In the Battle Against Coronavirus, Humanity Lacks Leadership」日本語訳の中の抜粋を記す

「感染症は、現在のグローバル化時代のはるか以前から、厖大な数の人命を奪ってきた。14世紀には、飛行機もクルーズ船もなかったというのに、黒死病(ペスト)は10年そこそこで東アジアから西ヨーロッパへと拡がり、ユーラシア大陸の人口の四半分を超える7500万~2億人が亡くなった。イングランドでは、10人に4人が命を落とし、フィレンツェの町は、10万の住民のうち5万人を失った。

 1520年3月、フランシスコ・デ・エギアという、たった1人の天然痘ウイルス保有者がメキシコに上陸した。当時の中央アメリカには電車もバスもなければ、ロバさえいなかった。それにもかかわらず、天然痘は大流行し、12月までに中央アメリカ全域が大打撃を受け、一部の推定によると、人口の3分の1が亡くなったとされている。

 1918年には、ひどい悪性のインフルエンザウイルスが数か月のうちに世界の隅々まで拡がり、5億もの人が感染した。これは当時の人口の4分の1を超える。インドでは人口の5%、タヒチ島では14%、サモア諸島では20%が亡くなったと推定されている。このパンデミック(世界的大流行)は、1年にも満たぬうちに何千万(ことによると1億)もの人の命を奪った。これは、4年に及ぶ第1次世界大戦の悲惨な戦いでの死者を上回る数だ。」

今やるべきことは、まずは自分がウィルスのキャリアにならないこと

日本の人は、感染者数の数字が低いせいか、かなり普通の生活を多くの人達が平気でしており、Social distancingの重要性をそれほど認知していないように見える。ロックダウンの状況のリアリティも、イマイチぴんと来ていない感じで、かなりのんびりしているように見える。でも、嵐は来る、或いはすでに波打ち際まで来ていることは事実である。経済的な打撃も然りだけど、これから人命喪失などで、どこまで誰が彼らを救えるのか?といった、医療崩壊も含めた惨い現実が近づいてくる可能性が高い。

言霊を恐れる日本は、最悪に備えたリスクマネジメントを、言う、聞くのを嫌がるけど、いやだと言っている時間はない。世界中が、嵐は来ることを予期して、今できることを必死にやっている。

個人としては、まず自分がウィルスキャリアにならないように、行動するしかない。

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