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アメリカの現実⑤「今企業は真剣にBlack Lives Matterへの対応を迫られている。今回は逃げられない」

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米国の「Gray rhino(灰色のサイ)」と呼べる「人種差別問題」はついに暴れだした

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米国企業は、コロナ禍によるパンデミックの次に、ついに暴れだした「Gray lino(灰色のサイ)」ともいうべき人種差別問題への対応を迫られている。金融業界では、「Black swan(黒い白鳥)」と「Gray rhino(灰色のサイ)」という2つの言葉が良く使われる。「Black Swan」は、1697年にオーストラリアで黒い白鳥が発見されたことによって、「白鳥は白い」と思っていた通念を破壊したことに由来して、常識ではありえない異常事態が、社会に大きな衝撃を与えてしまう現象をいう。

これに対して「Gray rhino」は、普通サイは灰色なので、特別に目を引く現象ではないが、一度サイが暴れ出すと、手が付けられないほど大きな被害をもたらす現象を指す。また「灰色のサイ」は、我々が日頃から認識しているにも拘らず、直接自分達に影響を与えないと勝手に解釈していることがポイント。米国では日常化している「人種差別問題」は、この「灰色のサイ」状態となり、問題認識はされていたが、長い間誰もが恐れて手つかずの状態であった。それが「George Floyd死亡事件」がトリガーとなって、ついに「灰色のサイ」は暴れだした。

米国トップ100企業は、まず反人種差別のために16億ドルの寄付を誓った

今回の「Black Lives Matter(BLM)」への企業の対応を、パブリックは今しっかりと見つめている。企業が今までのように、嵐が収まるまで首をすくめているといった、日和見的な態度を見せるのを許さず、企業に具体的な動きをするよう、要求している。企業は、巨大化した「灰色のサイ」に対峙した結果、まずお金を使うということで、自らの立場を明示する方法に出た。

米国のトップ100企業は、人種差別と戦うために16億ドル以上のお金を費やすコトを誓っている。金額的にダントツのトップは、Bank of Americaの10億ドル、2番目は、Walmart、Camcast、Appleが、各々1億ドルずつ出すことを誓った。現時点ではトップ100企業のうち42社は寄付を誓っており、10社が全体の寄付の90%を占めている。

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企業各社のBLMへのメッセージは、どれも「四角に切った黒い羊羹の金太郎飴状態」

George Floyd事件発生後のBLMムーブメントへの企業の対応は、以下のAmazonのTweetのように、四角い黒い羊羹を切った金太郎飴状態で、ソーシャルメディアは黒の四角だらけになった。各社ともメッセージで、人種差別と戦うコトは表明しているが、人種差別の根本にある「白人至上主義」といった、本質的な問題に触れるものは皆無に等しかった。実際、誰もが簡単に「人種差別は良くない」と言えるが、米国の社会、経済、文化の中に制度的に組み込まれた黒人差別の問題点を直視して、どのように解決するか、またどのように実施するかを言及するには到底至っていない

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黒人不在ー経営レベルに欠けるDiversity & Inclusive

大企業における黒人の経営レベルの参画および昇進は、長年多くの企業がお題目のように唱えているが、一向に改善されていない。Fortune 500の企業の中で黒人のCEOはわずか5人で、44位のLowe's、69位のMerck、81位のTIAA、438位のM&T Bank、485位のTapestryの5社のみで、Fortune 500の全CEOの1%でしかない。米国人口でアフリカ系アメリカ人は13.4%を占めるが、1999年以来Fortune 500の歴史で、僅か18名が黒人CEOで、2012年が最多で6名だった。勿論CEOだけに限らず、大企業の経営層に黒人が食い込む割合は非常に低い。 

Appleは今回人種差別撤廃のために1億ドルの資金を投入すると誓っているが、Appleの12人のシニアのリーダーたちの中で、黒人はこの人種差別撤廃のイニシアティブを指揮するLisa Jacksonのみである。彼女は、Obama政権時代に米環境保護局(EPA)を率いた経歴を持ち、2013年にAppleに入社している。CEOのTim Cookは、“Things must change and Apple is committed to being a force for that change,”とTweetしているが、実際にどこまでそれが可能かどうかは、今の時点では何とも言えない。

白人至上主義の問題に言及するBen & Jerry’s

そうした中で、非常に明解に白人を優遇する歴史的な背景を指摘しながら、反人種差別を強く訴えるのが、Ben & Jerry’sである。

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彼らはコングロマリットであるUnileverの傘下ながら、独自のCEOと役員会を持つ唯一の独立した組織で、自社の価値観に沿った政治的な見解を長年主張してきている。彼らは、米国法務省に対して公民権局の復権を、議会に対しては、1619年黒人奴隷が初めて北米に連れてこられた時から、現在に至るまでの差別の影響を明らかにするため、委員会設置の法案を可決するよう求めている。

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Ben & Jerry'sの首尾一貫した言動と行動の一致によって、初めて企業として発言する「Black Lives Matter(BLM)」という問題の意味が認識できる。

もう誰も暴れる「灰色のサイ」から逃れられない

人種差別問題に関して議論するならば、まず議論の参加者に黒人が参加すべきで、残念ながら多くの場合、当事者たる黒人は不在のまま論議されている。当然、人種差別の根っこにある、米国の負の遺産である黒人奴隷と白人至上主義の問題に踏み込んだ議論が出来ない、或いは口を閉ざしてしまう。白人にしてみると、自分を加害者側に置く、歴史の読み方には苦痛を伴うし、出来ればそこを通らずに議論したいというのが本音だと思う。

但し「灰色のサイ」は既に暴れ始めており、通常のやり方では、このサイを鎮めることはできない。特に、MillennialsやGeneration Zといった米国人口の半分を占める層は、Diversity & Inclusiveを重視する価値観の中で育った。彼らは、幼少時から周囲のマイノリティ(人種や性的志向性の違いも含めて)を認め、彼らを含めて全ての人間は平等であるべきと考え、BLMを口にすることへのためらいはない。彼らは、今、企業をじっと見つめて、「あなたはこの問題をどう考えて、それをどのように解決するのか? またそのためにどんな行動をとるのか?」を聞いている。

企業側は、四角い黒い羊羹をソーシャルメディアに貼り付けて、お金さえ出せば、コトが済むと思っているとしたら、それは間違いで、今回は即座に「No」と否定されて、顧客は離れていく。もう誰も「灰色のサイ」から逃げられない。

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アメリカの現実③「米国に起きた警察の軍事化とは?」

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「なぜ米国の警官は軍隊のように武装しているのか?」

日本に住んでいる人は、米国のGeorge Floyd事件によって広がった全米規模で拡大する市民の抗議行動と、それに対峙する警官との異様な構図に首を傾げる人も多いと思う。警官の武装の物々しさと、軍事行動とも思えるほどの態度、さらに平和的な抗議行動をとる市民達への催涙ガスやゴム弾による威嚇など、通常の日本の警察の常識から考えたら、あり得ないほどの過激さである。20代とおぼしき若い女性は突き飛ばされて、道路の溝にぶつけられて骨折し、75歳のシニア男性も突き飛ばされて、頭部を打って昏倒したまま置き去りにされるなど、ヴィデオを通じて描写される米国の警官達の無表情で攻撃的な行動は、理解しがたいものがある。

軍隊から警察にトランスファーされた大量の武器

1033プログラム」の下で、1990年から2017年の間、およそ60億ドルの金額に上るアイテムが、United States Department of Defense (アメリカ国防総省)から警察にトランスファーされた。「1099プログラム」とは、1990年に開始された国防総省の余剰武器処分計画プログラム。連邦政府の余分な武器を州政府および地方自治体を通して、地元警察に配送することを認可したもの。これには「controlled items (例:ドローンやヘリコプターなど)」と、「uncontrolled items (例:家具やツールなど)」といった、ラップトップから自動小銃まですべてのアイテムが含まれる。2018年のRANDの分析によれば、2015年から2017年の会計年度では、トランスファーされたものは、uncontrolled itemsは12億ドル、controlled itemsは7億7500万ドルの価値に充当する。

以下は、RANDによる2018年の国防総省から警察にトランスファーされたアイテムを実際に購入した場合の内訳であるが、総額は18億ドル8900万ドル以上となる。内訳は以下の表にあるように、MRAP(耐地雷・伏撃防護車両 )849台(約5億8300万ドル)、エアクラフト458台(約4億3300万ドル)、輸送トラック5608台(約2億8500万ドル)、5.56mmライフル6万4689丁(約2800万ドル)といった莫大の数および金額の元軍隊の使っていた武器が警察に渡った。

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「1033プログラム」とは?

1033プログラムは、1990年当時は主に麻薬犯罪に対抗する警察官を援助する為開始されたプログラムであったが、2001年9月11日のテロ攻撃後、連邦政府の反テロ対策の一環として警察を軍隊化するために、大幅に拡大された。

2014年ミズーリ州のFergusonで白人警官による18歳のMichael Brownの射殺事件が起きた、大規模な抗議デモが発生し、その鎮圧のために重装備の警察が出動し、市民から多くの非難が起こり、これを受けた当時のObama大統領は、1033プログラムの1部を改正した。しかし、2017年大統領に就任したTrump現大統領がプログラムを再開した。

勿論今回のGeorge Floyd事件への抗議運動に対して、警察は1033によって軍隊から提供された武器を市民への威嚇に多く使っている訳ではない。ただ、Trump大統領の「地方自治体の警察に対して、治安維持のためならば、警察の軍事的行動も必要」というメッセージを裏付けるように、警察は市民に対して、MRAP、閃光手榴弾、催涙ガス、ゴム弾、防弾チョッキ、ヘルメットなどを使って、威嚇しているのは事実である。

警察の黒人コミュニティへの日常的な締め付けを、今回は全てのアメリカ人が目撃してしまった

警察の軍事的な威嚇は、日常的に黒人コミュニティで行われている。例えば黒人に対して令状を執行して家宅捜査をする際、ただ単に逮捕するのではなく、Mallet(破城槌)や装甲車、暗視ゴーグルなどを使って強制捜査を行い、犯罪に使われた可能性がある金銭や物品を押収する。多くの警察では、押収された金品を売って警察の予算として使うことが許されている。そのため、武装化は警察の予算確保にとってなくてはならないものになっているという分析もある。

George Floyd事件によって、黒人以外のコミュニティはこうした警察による軍事的威嚇行動を、自分事として可視化してしまった。これは、貧困層や黒人コミュニティのみに起こるものではなく、自分達もいつこうした警察の攻撃を受けるかもしれないという恐怖と不安を創出した。

警察官の恐怖を取り除くための武装化が、警官を市民の敵にしてしまった

警察の軍事化の背景にあるのは「警察官の安全のため」という考えだが、種々の調査で、銃乱射などの限られた状況をのぞき、軍装備は必要ではないという結果が出ている。また州のSWAT(警察特殊部隊)に関しても、多くは警察がSWATを主にマイノリティのコミュニティに対して使っていることと、SWATが暴力犯罪率や警察への暴行、警察官の死を減らすという証拠は発見されていない。むしろ、SWAT使用は住民の警察への資金援助や支持を減らし、人々がコミュニティの中で感じる危険の量を増加させているというコトも言われている。

実際、重装備は警官を安心させるが、そういった鎧で固めた姿で、平和的な市民に対峙した時に、どこまで警官は市民に落ち着いて話せるか? また市民は彼らの姿を見た時に、自分達を守るのが警官であるというコンセプトを見出せるか? 答えはどちらに対しても「No」である。

マインドセットを変える難しさ

人間はユニフォーム(制服)を着ると、なぜかそのチームと一体化して、個人として考えや行動が金縛りにかかったように出来なくなる。ユニフォームにはそのような効果があり、施政者はユニフォームによって、個人の考えを抹殺しようとする。警察の軍事化は、ユニフォームではなく、軍隊が使うような軍備を装備して、警官に戦争において外国勢力と戦う軍人的な行動を強いて、市民達に対峙するように示唆する要因になりうる。

1に1人の警官は、様々な問題を多角的に考えることができる個人だと思う(思いたい)。ただし、一旦ユニフォームを着て、重装備をした軍人のような姿になった途端、マインドセットは変化する。また、もう1つ考えなければならないコトは、彼らの意識、あるいは無意識下の潜む「人種差別、即ち自分とは異なる人達への嫌悪と恐れ」である。彼らは、麻薬犯罪撲滅と言いながら、自分達が簡単に抑え込める黒人コミュニティに出かけて行って、点数を稼ぎたいという気持ちも存在する。それでも、今は21世紀である。そういったマインドセットから脱却したいと思う警官も多く居ると、私は信じる。

私はアメリカがTipping point(臨界点)に達したという風に思いたい、例えそうでなくても

長年蓄積された気持ちというのは、一朝一夕には変えられない。但し、そうした蓄積もある種の「Tipping point(臨界点)」に達すると、いきなり人間の気持ちや行動は変わっていく。George Floyd事件に対する抗議運動は、アメリカ人に「人種差別」という、400年間の米国の負の遺産の連鎖を断ち切るための、ある種の臨界点に達したことの証であると思いたい。例え、まだ達してなくても、そこに向かう必要があると実感レベルで感じた人は少なくないと思う。

11月の大統領選挙はアメリカ人とってのFundamental choiceである。

「Is it Trump or America?」

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書籍『ひさみをめぐる冒険』から「海からの漂流者」2002年6月5日のコラム

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これは18年前に書いた私のコラム「Sailing-海からの漂流者」。このコラムは、2003年発行の私の初の書籍『ひさみをめぐる冒険―サンフランシスコで暮らす楽しみ "It's an Adventure - Hisami Lives America" 』に掲載されたもの。興味のある方は読んでみてください。

海からの漂流者

昨日(2002年6月4日)遅く10日間のメキシコのSea of Cortez (Gulf of California)のセーリングのバケーションから戻りました。La Pazで過ごした10日間はまったく別の惑星にいたような気分で、まだコンピュータの画面を見ていると揺れてきます。

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サンフランシスコ空港(SFO)に着いた時は、ベイエリアの人と車の多さに呆然として、海からの漂流者のように、ポカーンとしていました。

海水で食器や身体を洗い、40度Cの暑さと砂漠の乾燥、また夜になるとボートを吹き飛ばすように激しく吹き始めるCoromuel(南西の風)のために、デッキの上で毎晩必ず誰かが寝ずの番をしながら見守る海上生活。マングローブのラグーンで蜂に襲われ(幸運なことに蜂とは正面衝突しましたが、刺されなかったので顔にちょっと傷ができただけですみました)、鯨やイルカがボートのすぐ横でジャンプしたり、ダイブしたりするのを見ながら一緒になって嬌声をあげ、アザラシのコロニーのすごい鳴き声に耳を塞ぎながら、大いに野生の海生動物たちを楽しみました。またカイヤックやシュノーケリングで無人の島々のビーチやリーフを垣間見て、自然の中で生活する喜びを堪能し、今も海に沈む夕陽の美しさが目に焼き付いています。

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Simple is Best(シンプルが最高)

できり限り人工的なリソースを使用せず、あるものだけで生活する術も習い、今回のバケーションは私にとってまたひとつの発見の旅であったような気がします。Sea of Cortezに浮かぶ水のない小さな島に住む10人に満たない漁村や、半島内部の異常に乾いた土地にオアシスのように存在する小さな町など、普段考えもしない生活を目の当たりにして、今自分の生活を振り返っています。

Simple is Best(シンプルが最高)、つくづくこんな言葉が全てを物語っていて、自然の豊かさと雄大さに感謝と畏敬の念でいっぱい、そんな感じです。帰宅後にたまっていた550通のEmailを見て、普段自分がいかにスポイルされているかが、本当に実感できました。

チャーターボートによる10日間のセーリング

今回のバケーションは、夫が所属するヨットクラブのClub Nautiqueが主催するツアーでした。今年の初めに募集告知が出され、最終的に夫と私を含む3組のカップル(6人)が応募して、クラブのインストラクターのエリザベスがスキッパー(キャプテン)としてグループを引率することが決まりました。その後出発の1ヵ月前から、メンバーの顔合わせとバケーション中のセーリングのコースやアクティビティ検討のための会合が開かれ、また事前にお互いの親交を深めるためにディナーも開催されました。確かに全く知らない人間同士が、7日間ボートの上で食料や水を持ち込んで共同生活するのですから、事前の準備は周到にされるべきです。

ただ漠然とバケーションを考えていた私は、食事や飲み物の種類や量の事前予約、衣類や安全装備、所持品の確認など、さまざまな準備に費やす時間とエネルギーに驚き、さらに今回の旅行は自然の中で暮らすサバイバル生活に似た危険を伴うものであることも改めて認識しました。

特にSean of Cortezの島々は、自然保護の下に環境破壊につながる人工物の持ち込みは一切禁止されています。そのため食器や身体を洗う洗剤はすべてオーガニック、プラスティック類はすべて持ち帰るという規則なので、ボートの中ではいかにごみを出さないか、さらにいかに持ち帰りのごみを収容するかが大きなポイントとなりました。

セーリング三昧の引退したシリコンバレーのミリオネア

参加した3組のカップルは、各々個性的なキャリアと経験をもつセーリング好きの人たちです。その中のひとり50代後半のグレッグは、ポーランド生まれでスウェーデンからアメリカに移住し、初期の頃のシリコンバレーでコンピュータチップのビジネスで成功を収めたミリオネアです。

彼はビジネスの世界からリタイアして、生活をどんどんセーリングにシフトしている最中です。グレッグのボートは、ヨットと呼ぶのにふさわしい100万ドル以上の価値のあるフランス製の美しいJeanneau 52です(通常アメリカでは日本で「ヨット」と呼ぶ船を「ボート」と呼んで、非常に高価な船を「ヨット」と呼びます)。彼はベイエリアとスウェーデンにヨットを持っており、平均的なベイエリアのSailor(船乗り:日本では「ヨットマン」と言う言葉は、アメリカで使いません)とは違うレベルで、セーリングを楽しんでいます。すでにメキシコにセーリングのチャータービジネスのための土地を購入しており、後半生は全てをセーリングにつぎ込む予定です。また彼はこれから家族と一緒にSFから南太平洋へ半年間の航海に出かける予定で、その準備を楽しそうに語っていました。

夫をすっかり気に入ったグレッグは、飛行機代も食事代もすべて出すからぜひCook Islandsへひさみと一緒に飛んできてほしい、一緒にトンガやタヒチを回ろうと、真剣に夫を誘っていました。夫は、3ヵ月間の南太平洋無料セーリングの申し入れに気持ちがフラフラとなったらしく、考えてみると答えたそうです。

家族のようになったバケーション仲間

また元Navy(海軍)でベトナム戦争の経験のある50代半ばの弁護士ボブは、今後は歴史の先生になるためにPh.D(博士号)をとろうとスタンフォード大学で勉強している最中です。彼の妻のジーンは、ドットコムサバイバーとも呼べるスタートアップ企業の副社長で、異常に忙しくストレスのたまる仕事しながら、セーリングの時だけは全てを忘れて自然を楽しむ料理好きな女性です。

Sea of Cortezでは夕陽が沈んだ後は、いつもこういうStory Teller(物語を語る人)たちが、順番に世界中で経験してきたさまざまな出来事を話し始め、食事とワインがどんどん進んで興味深いストーリーに満ち溢れたディナータイムでした。セーリングが好きという共通点だけをもつ他人同士の7人が、狭いボートで7日間暮らすことに、最初はちょっと遠慮や気づかいがありましたが、2日3日と過ぎていくうちに段々みんなの気持ちが家族のようになってきて、彼らが今ここにいないのが不思議な気分です。

40年ぶりに太平洋を渡ってきた本物の船乗り

このバケーションの1ヵ月後の7月17日、本物の船乗りの63歳の堀江謙一さんが日本からゴールデンゲイトをくぐって40年ぶりに太平洋を単独航海してきました。地元紙では「Better with age」と題し、23歳だった堀江さんが40年前に太平洋を一人ぼっちの航海でSFに来た時と同様に、温かいもてなしの記事が掲載されていました。

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最初の航海当時、堀江さんは英語もしゃべれずビザも持たずにきて、政府移民局と入国で大いにもめました。それを当時のSF市長Gorge Christopherが、堀江さんの単独航海の勇気を称えて30日のビザを発給し、名誉市民として大いに歓迎したというストーリーも紹介されています。今回の航海は年齢とともにすばらしくなる堀江さんと題して、さらにその勇気を賞賛しています。

SFと堀江謙一さんの再会

彼の最初の「マーメイド2世号」は今でもSFの海軍博物館に保存されています。7年前にアメリカに移住してきた私は、最初に堀江さんのボートの小ささに驚き、またその小さなボートで5270マイルの太平洋を94日間ひとりで航海してきた堀江さんの勇気を、日本人として大いに誇りに思ったことを記憶しています。

彼も40年前のSFで受けた温かい歓迎ともてなしが、今でも心に残るといってSFとの関係を強調しています。今回も外洋からゴールデンゲイトをくぐるのが難しく潮流に押されるようにくぐりぬけましたが、40年前にやはり同じようにゴールデンゲイトの外で漂流していた堀江青年を発見して助けたBill Fisherが、彼を迎えるために船でゲイトに向かい、お互いに再会を喜んだようです。

未来を感じさせる堀江さんの新しいマーメイド3世号

今回のボートはサントリーの後援らしく名前は「モルツ・マーメイド3世号」。全てリサイクル素材で作られており、アルミやソーダ缶、ウィスキーの樽で使用されたオーク材などサントリーらしい素材を用い、通常ボートで使用されるディーゼルなどの化石燃料の代わりにRenewable(再生可能)な燃料電池を使用、またサテライトを使ったGPSなどのハイテクノロジー装備による航海でした。

こうした新しいコンセプトでの航海自体が、堀江さんの未来志向とチャレンジ精神を大いに表しており、私も今後の環境を考えたセーリングライフにおいて、燃料電池によるエンジンをぜひ使用してみたいと思っています。

63歳は引退には若すぎる年

堀江さんのコメントで、「今回が最後の航海ではない。63歳は引退するには若すぎる」という言葉がクローズアップされており、私を含めてベイエリアの人たちは、彼のその言葉と態度に非常に共感してインスパイアされました。

日米間で感じることは、こうした民間の人たちの交流の重要性です。日本の歴代の首相や外務大臣がベイエリアに来た時でも、こんな大きな新聞記事の扱いはありません。人の心を感動させる生き方そのものが、日米間の垣根をらくらくと超えるのだなと実感しています。堀江さんに勇気付けられた船乗りのはしくれとしては、その堀江さんをサポートするサントリーに敬意を表して、今日の気分は「堀江さんに乾杯」という感じです。

追記:その後の仲間のコトをここに記します。書籍の中の全ての名前はプライバシーを考慮して仮名で書きました。

1)南太平洋のセーリングの準備をしていたグレッグは、準備の最中に眼球に癌細胞があることが分かり、セーリングを断念して治療に専念したが、その後しばらく経ってから亡くなってしまった。私達夫婦は彼の52フィートのJeanneauに、彼の家族と一緒に乗り込み、よくSFでセーリングした。私の亡くなった母を初めてSFのベイでセーリングを連れ出した時、グレッグの52フィートのヨットでセーリングをしており、2012年我々は37フィートのフランス製のセールボートBeneteau を買ったが、母に「随分小さい船だね」と言われたことを思い出す。グレッグのコトを思い出すと涙が出る。

2) ドットコムサバイバーのジーンは、このSean of Cortezの航海の後、2005年私達夫婦が15日間かけて、SFからハワイのマウイ島まで太平洋を半分航海したボートを、ハワイからSFまでをクルーとして運ぶという帰りのセーリングをしている縁があった。さらに驚いたことは、昨年私達夫婦がSt Georgeに家を購入したが、このジーンとその夫のボブが同じコミュニティに3年前から住んでいるという奇遇も起きた。

3)堀江謙一さんのその後の冒険は継続しており、彼はヨットで世界を3周、太平洋を8回横断。1962年、23歳の堀江さんは94日間かけて世界初の太平洋無寄港単独横断。その後ソーラーパワー(太陽電池)のボートで、足漕ぎボートで、アルミ缶リサイクルのボートで、生ビールの樽を利用したヨットなどで、冒険の歴史を紡いでいる。2008年には、波の力だけを動力とするウェイブパワーボート(波浪推進船)「サントリー マーメイドⅡ」号でハワイ~紀伊水道の航海を成功させた。風力、人力、波力、太陽光という四つの自然の力それぞれを推進力としたヨットやボートで数々の冒険航海を制覇したのは、世界で堀江さんただ1人。

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アメリカの現実①「"I can't breathe"米国の解決されない負の遺産」

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George Floyd事件が突き付けた米国の現実

5/28(たった4日前の事件)、ミネアポリスで白人警官がすでに手錠を掛けられている黒人男性George Floydの首を、膝で9分間押さえつけて、死亡させた。彼は何度も "I can't breathe, Sir (彼は死ぬ苦しみの中で警官に丁寧にSirという敬語をつけて訴えている)"と言って助けを求めながら、亡くなった(殺された)。彼を殺した警察官は、事件直後解雇された上で、第3級殺人などの罪で訴追されているが、事件を側で見ていて何もしなかった3人の警官に関しては、刑事罰の訴追は発せられていない。その後、この映像を見たアメリカ人の抗議運動と暴動は、全米に広がり、コロナ禍が今も進行中のアメリカは、またしても歴史的な負の遺産である「人種差別」といった、越えられない苦しみで、のたうちまわっている。

誰もが”Enough is enough"だと思っている

各地の暴動は既に多く報道されているから、敢えてここでは触れないけど、大都市以外でも、アメリカに住む以上、誰もがこの事件に強い反応を示している。私が住むSt Georgeは、人口は9万人でユタ州の中では7番目、全米では363番目の大きさのシティで、人種別の人口では白人が88.48%(7万2,727人)を占める。黒人人口は0.82%(670人)と、アジア系の0.89%(728人)と同様に少なく、1%にも満たない。そんなカントリーサイドの街でも、5/30には200人ぐらいの人達が集まり、“All Lives Matter”, “No Justice, No Peace” and “He Couldn’t Breathe,”といったプラカードを掲げて、平和的な抗議行動を実施した。全米で抗議運動が暴動化している訳ではなく、どんな小さな街でも、人々はこの事件を見て、"Enough is enough"という気持ちとなり、これを変えるために何かをすべきだと思っている。

平和的な抗議運動を暴動化にすべく扇動するグループ

また誰もが、この事件を利用して、平和的な抗議運動を、略奪・焼き討ちといった暴動化にすべく、扇動している人間やグループが、存在することを知っている。ミネソタの州知事のTim Walzは、白人至上主義者や麻薬カルテルなどの州外から来た扇動者が暴力をあおっていると非難したが、Trump政権は直ぐにこの問題の大半が「無政府主義の極左勢力である。彼らはAntifa(アンティファ)的な戦術を使っており、多くは州外から来て暴力を促している」と決めつけた。アンティファは、反ファシストだと主張する扇動者のゆるい集まりを指し、彼らは黒い服を着て頭を隠し、他の人に前線を任せ、遠くから警察への暴力を指示することが多い。

暴動化を導く扇動者達の解明は、ぜひ冷静に事実を洗い出し、誰もが視覚化できるヴィデオやその他の証拠を駆使して、解明してほしい。理由は、こうした人種差別に耐えかねた黒人たちが暴動を起こすと、政権は、黒人たちを暴動と略奪を行い、市民生活を脅かす人間としてカリカチュアして、"Law & Order"の強化を図るからである。既に大統領は、この事件を自分の政治的キャンペーンに利用して、暴動を煽る以下のようなTweetsを発している。

"A total lack of leadership. Either the very weak Radical Left Mayor, Jacob Frey, get his act together and bring the City under control, or I will send in the National Guard & get the job done right....."「リーダーシップの完全な欠落。非常に弱い極左のミネアポリスの市長Jacob Freyはすぐに行動して、シティの治安を取り戻せ。そうでないならば、自分が州軍を送って解決する。」

コロナ禍による感染と雇用悪化は、黒人層を直撃している

アメリカは、コロナの感染拡大による雇用の悪化で、4月の失業率は14.7%となり、5月は20%に達する可能性もある。4月の失業率も黒人は16.7%と白人より2.5ポイント高い。コロナ感染においても、黒人の死者数は白人の2.4倍にのぼるコロナ禍が黒人層を直撃している最中に、この事件が起きた。事件の抗議運動の暴動化の一端には、こうした貧困に喘ぐ黒人層の蓄積されたフラストレーションと怒りという心理的な要因も、引き金になっている。更に悲劇的ともいえるのは、暴動によって黒人経営を含むMom & popの小さな店舗も破壊され、ビジネス再開が断たれ、密集した抗議運動によって黒人層に、よりコロナ感染を拡大させる可能性もある。

アメリカで黒人として生きることの意味

CNNの黒人レポーターは、報道許可を取り、警察から指示された場所で生放送を行っていたにも関わらず、生放送の真っ最中に、彼とスタッフ達は警察に拘束されるというコトが起きた。以前Obama大統領は、自分は大統領であるが、例えそうであろうとなかろうと、自分が黒人である以上、言われなき取り扱いが起こる可能性があると発言していた。

ミネアポリスの市長Jacob Freyの以下の発言は、これを裏付けるものである。「黒人として生きることが、アメリカでは死刑宣告に等しいという事態であってはならない、白人警官は人間として根本的な過ちを犯した」

"Being Black in America should not be a death sentence. For five minutes, we watched a white officer press his knee into a Black man’s neck. Five minutes. This officer failed in the most basic, human sense."

人種差別による貧困は、社会を分断し、負の連鎖を継続させる

誰もが「何時になったらアメリカに人種差別がなくなるんだろう?」と考えていると思う。歴史的に見れば、1640年代から1865年のアメリカ合衆国憲法修正第13条が発する前まで、現在のアメリカ合衆国領域内ではアフリカ人とその子孫が合法的に奴隷化されていた。1860年のアメリカの国勢調査では、奴隷人口は400万人に達していたという。この制度がもたらした人種差別の傷跡は、155年経った今でも、アメリカを引き裂いている。

Trump政権を支持する35%が、全て人種差別主義者であるというつもりはさらさらない。ただ問題は、大統領その人の発言や行動が、酷い「人種差別」的な考えの元で、人々の分断化を促進させているのは事実である。これはまさに負の連鎖の継続を促すものである。

アメリカの貧困問題と人種差別は双子状態でついて回っている。今回のパンデミックによって、人の生き方や暮らし方が変わる可能性があるならば、このGeorge Floyd事件によって、負の遺産の「人種差別」に目を背けず、真剣に向き合い、人々のマインドセットを変えることも可能だと思う。AppleのCEOのTim Cookは、この事件に触れて、以下のように、社員に呼び掛けている

"With every breath we take, we must commit to being that change, and to creating a better, more just world for everyone."

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コロナ禍でのアメリカ生活⑱「パンデミックによる人々のPanic Buyingの中に潜む問題とは?」

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人々は州ごとの制限緩和をまだ信用していない

米国は5/4から州によって異なるが、コロナ禍による人々及びビジネスの規制緩和を実施し始めた。私の実感レベルは、まだまだこのパンデミックは収束とは程遠いし、自分自身が、次の感染数上昇の波を作る手伝いをしたくないということで、基本的には週に1度の食料品の買い出し以外は、不必要な外出及び人との接触は避けている。過去2か月間、毎朝6時起床、2時間自宅オフィスで働き、その後8:00から朝稽古(Jazzercise)をオンラインのオンデマンドで1時間して、また仕事に戻り、夕方17時には自宅のオフィスのデスクを離れる、といったルーティンを崩していない。

4/28-5/3の直近の調査では、一般の人達のコロナ禍に関する気持ちは、「最悪は過ぎたとする人が31%」、「最悪は今だとする人が30%」、「最悪はこれからやってくるとする人が38%」と、意見は分かれている。これはどこに住んでいるかという個人の居住エリア、さらにどんなコロナ禍による体験をしたか、など実感レベルによって、大きく異なる。

以下の表は、同調査で「自分が居住する州でどんなビジネスを再開すべきか?」という質問への回答である。再開を望むトップは、ゴルフコース41%で、以下は順に小売店舗34%、理髪店・美容院31%、銃販売店29%、レストラン内での外食26%、ネイルサロン25%、ジム22%、映画館劇場18%と続く。

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ゴルフコースの41%は、戸外で運動しながら物理的にソーシャル可能だということで、2 mのPhysical distancingを取りながらエンジョイできるので、トップに上がる理由は分かる。但し、最初にパンデミックの影響が大きかったレストランに関しては26%と低い数字である。これは、飛沫が飛び交い空気感染の恐れが高いレストランに関しては、お客は行きにくいのが現状で、今後ビジネスを再開しても、実際に以前のように顧客が来るかどうかは難しいところである。また、今後も引き続き経済的な不安を抱える消費者は、自宅待機中に外食がもたらす価値以上に、自宅で食事をする楽しさ、快適さ、便利さ、経済性などを再認識した可能性も高い。

Panic buyingで新たに注目される急増した銃セールス

多分、日本の人達は、この表の4番目に入っている銃販売29%を見て、大いに首を傾げると思う。「なぜコロナ禍で銃を買いたいのか?」という疑問は、以下のNY Timesの月間の銃セールスの推移を見ると理解しやすいと思う。

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コロナ禍によって「Panic buying」状態となったアメリカ人は、トイレットペーパーや缶詰のみならず、2020年3月のたった1か月で新たに190万の銃を購入した。これは過去の月間銃セールスの中で、2013年1月のObamaの再選と2012年12月小学生20人を含む26人が殺されたSandy Hook Elementary Schoolの大量銃撃事件に次ぐ、2番目に大きなセールス増となっている。当然に、銃購入の際のバックグランドチェックも急増しており、2/23から3/31までの銃セールスのレベニューは、対前年比792%増と跳ね上がっている

アメリカ人は、ハリケーン・地震・竜巻などの自然災害、Obama政権誕生や再選(銃規制を主張していた)、更に学校やコンサートなどの大量銃撃事件などが起こるたびに、銃砲店に駆け込む。

アメリカ人の銃カルチャーは「自衛」という発想で歴史的にも深く根付いており、銃を所持することは憲法が保障する権利として、多くの人がそれを強く主張する。この銃カルチャーの根底に潜むサイコロジカルな感情の中には「政府ですら必ずしも自分を守る側にいつも立っている訳ではなく、時には自分達に襲い掛かる可能性もある。自分と自分の家族を守るために、自衛の手段として、銃は必要である」という歴史的に構築された政府への懐疑的な見方も潜む。

過去のパンデミックではここまで銃セールスは増加していなかった。

今回のパンデミックのサイコロジカルなプレッシャーーは、今までに例を見ない形で、人々を心理的に追い込んでいる。何故か? 

ここから私の考えだが、20世紀が構築した薔薇色の世界ともいうべき「グローバル経済及び社会」が如何に脆弱かということを、2020年コロナが立証してしまったからではないか? パンデミックは、「ヒト」と「モノ」の移動を停止させて、世界市場に大打撃を与え、原油や株価の暴落を引き起こし、「カネ」の流れも止めてしまった。その間、Fake newsやPropagandaも含めて「情報」だけは世界中を駆け巡り、人々の不安をより増幅させている。

今日発表された米国の失業データによると、先週更に320万人が失業保険を申請し、過去7週間で合計3,300万人以上が失業した。州によっては就業人口の25%が失業してしまったともいう。

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医療崩壊も然りだが、2か月前まで現大統領は、米国の薔薇色の経済の強さと失業率の低さを謳歌し、己のリーダーシップが、この薔薇色の米国社会を牽引していると豪語していた。彼が描いた「砂上の楼閣」は、あっという間に崩れ、人々は今の生活、或いは3か月後の暮らしを、どのように切り抜けるのかと、異常な不安に苛まれている。これは人々が過去を振り返っても例のない状況で、アメリカというInstitutionが如何に脆く脆弱かという疑問はもたらし、政府や州や企業に頼れない以上「自衛強化(銃購入)」に走ると、考える人を創出してしまったのではないか? と思う。

メンタルヘルスの悪化も考慮すべき

私が一番心配するのは、こうした人々の不安を逆手にとって、それを更に煽り、「新たな敵(例えばアジア人へのヘイトクライム)」をこしらえて、暴力による解決を先導しようとする集団やグループの動きである。彼らは、言葉巧みに密やかに、恣意的な情報を流して、自分達の仲間として、獲得したい人達を誘導する。殆どの銃の所有者及び購入者は、武器としての銃というよりは、射撃やハンティングなどの趣味、或いは牧場や農場経営で野生動物から家畜を守る自衛のためなど、銃撃事件とは程遠い人達である。但し、そうした人達でも、コロナ禍で切羽詰まった人間に自宅を襲われるといった危険への備えは考えていると思う。

パンデミックはメンタルヘルスの弱い人達を、さらに不安に陥れる可能性があり、そうした人達が上述したグループなどと接触したり煽られたりすると、思いもかけない事件が起きる。DVの増加やオピオイドやその他の薬の中毒患者の過剰摂取も増えており、メンタルヘルスの悪化は否めない事実である。様々な角度で、このパンデミックを捉え、俯瞰で見ながら、出来る限りPositiveな気持ちになる必要がある。「パンデミックは、必ず収束する」、このマントラを唱えて、Panic buyingといった行為は避けることを勧める。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑭「Post Corona Eraのために今考えておくこと」

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Paper or Plastic?

25年前米国に移住した時、初めてスーパーマーケットのキャッシャーに「Paper or Plastic?」って聞かれて、てっきり、「支払はクレジットカードか紙幣(現金)か?」と聞かれたと思い、「プラスチック(カード)」と言ったことを突然思い出した。勿論これは買ったものを紙袋かプラスチックの袋のどちらに入れるのか?という意味だったが、何故か、私は即座に支払い方法だと思い込んだ。当時は、キャッシュ(現金)、チェック(小切手)、デビットカード、クレジットカードの4種類しかなく、多くの人達がチェックブックを取り出して、金額を記入し、キャッシャーはそれをレジスターのマシンでVerifyして受け取る、という古き良き時代(或いは物凄く時間のかかる時代)だった。

非接触モバイルペイメントの支払いが要求される時代が来るとは

今、米国では兎に角、人との接触を避けることが最も重要な取り組みとなっている。キャッシュもクレジットカードもデビットカードも接触型の支払い方法なので、非接触のApple Pay、 Google Pay、Samsung PayといったモバイルペイメントがPreferという店舗が出てきている。これは、消費者にかなり劇的な行動変容を求める大きな動きと言える。現在、キャッシュを断ってカードのみの決済の小売店舗は多いが、顧客がカードをマシーンに差し込んだ後、キャッシャーは必ずマシーンのパッドをワイプして消毒するという手間をかけている。キャッシャーは、透明の仕切りで顧客との接触は避けているが、多くの手間と時間が支払いのやり取りでかかっている。

米国2023年近接モバイルペイメント利用額は2,200億ドルに達する(2019年9月のeMarketerの予測

eMarketerによると、米国の2019年の近接モバイルペイメントの利用額は1,000億ドルに達すると予想されているが、これは1人当たり年間平均支払額$1,545を意味し、近接モバイルペイメントの支払額は対前年比24%増。利用者は6,400万人(9.1%増)でスマートフォンユーザの30%にあたる。

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Starbucksは、この非接触モバイルペイメントの先駆けで、市場の25.2%を占めているが、最有力ペイメントは何といってもApple Payである。2019年の米国非接触モバイルペイメント市場の30.3%を占め、2019年末までにApple Payは、米国小売店舗の70%迄使えるようになると予想されている。ペイメントに関しては、かなり保守的な私ですら、このコロナ禍でモバイルペイメントを要求された場合を想定して、Optionとして、遂にApple Payをセットアップした。

「Post Corona Era」では不必要な接触は避けるという心理が働く

これらの数字は全てコロナ禍の前の予測で、上述したように、現在のコロナ禍で支払いに限らずあらゆるコトに、非接触を要求されている。この流れで行くと、結果非接触のモバイルペイメントを多くの人が使い始めて、多分その便利さと手軽さによって、これらの数字は大きく増えてくると思う。またPost Corona Eraでは、非接触モバイルペイメントの利用場所が急速に拡大し、アメリカ人は、支払いアカウントをクレジットカードやデビットカードに紐づけて、手軽にどこでも、非接触モバイルペイメントを利用して、以前と同様に買い物をし始めると思う。

ひさみが考える消費者の行動変容がおこる「心技体」

今回のパンデミックは、世界中がいきなり鎖国のような状態となり、社会・経済活動が停止するという、今までの規模では考えられない制限を、人々に課している。勿論国ごとにその制限レベルの差はかなりあるが、「行動に制限をかけられて生活する」という形を強いられるのは、かなり長く生きてきた私でもあまり記憶がない。消費者の行動変容が起こるには、心技体ともいうべき、3つの要件が整わないとなかなか起きない。非接触モバイルペイメントの浸透拡大の、心の部分は「人と接触しないですむし、簡単で便利で速い」、技の部分は「NFCシグナルに機能する新たなPOSシステムの拡大で利用場所が浸透拡大している」、「体」の部分は「自分の身体の一部としていつも持ち歩くスマートフォン利用」といった点が挙げられる。

「Post Corona Era」には、このペイメント以外に、様々な消費者の行動変容が起きてくると思うが、マーケターとして、今必要なことは冷静に人々の心理や行動を見つめて、潮目を読む、これが肝だと思う。潮目は変わる前に読まないと意味がない。潮目を読むためには、1人のマーケターとしての視点は勿論であるが、より重要なのは1人の消費者としてどのように生活を考えるかという点で、この2つはどちらが欠けても、潮目は読めない。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑫「末娘のZoom weddingに参加して」

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昨日突然末娘から、太平洋時間午後18時に、Zoom経由で延期していたWedding Ceremonyをするので、以下のZoomの情報にアクセスして欲しいというTextが入ってきた。この式の主催者(招待者)は長女で、PC、スマートフォン、タブレット、各々でのアプリのダウンロード情報とアクセス情報(勿論パスワードあり)を記した文面を、私達夫婦を含む、近しい家族宛てに同時Textしてきた。

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初のZoom weddingは参加者35組以上の大きなイベントとなる

もともと、娘は3/27にOaklandのCourtで結婚式を挙げる予定だったが、カリフォルニア州の自宅待機規制が始まり、F2Fでみんなが集まる式は、独立記念日の7/4に延期した。延期を決めた当時は、7月ならば収束の可能性があると思っていたが、米国の深刻化するコロナ感染状況とその収束の可能性の不透さから、結果、彼女達は、突然昨晩のZoom weddingを決めたらしい。

私達は、式の3時間前まで何もこのことは知らなかったので、せいぜいごく近しい近親者のみの気軽なものであると思っていたが、時間になってログインすると、末娘の実の母親(夫の前妻)から始まって、新郎側の父親、姉弟、友人達、新婦側の親族や友人と、カリフォルニア、ユタ、アイダホ、コロラド、オクラホマ、テキサス、フロリダ、マサチューセッツ、NY等々、全米に散らばる親戚友人達、合計35組以上が参加する大きな式であった。参加者の年齢も、下は3歳ぐらいから上は80歳代(末娘の祖母はZoomのアプリを孫のサポートで直前にダウンロードしたけれども、みんなの顔を見られるが自分の顔を画面に映すことは最後までできなかった)まで、みんなのメッセージが飛び交った。

みんなが泣いたZoom wedding

長女が全体をプロデュ―スしコンダクトして、新婦新郎の登場から始まり、新婦のスピーチは、彼女が愛した亡くなった家族・親戚1人1人とのエピソード(私の父と母の名前も彼女の祖父母として語られた)が感動的で、さらに長女が2人の結婚を告げる言葉によって、指輪の交換と誓いの言葉が述べられた。私も泣いたし、多くの親戚・友人も涙する、素晴らしい結婚のセレモニーだった。

新郎はインド系アメリカ人で、私達は、今回初めて彼の父親を含む家族の顔をZoomで見て、彼らの言葉を聞いた。彼の家族のことは殆ど知らないが、2人とは昨年一緒にSF Bayでセーリングしており、新郎は昨年の甥のお葬式にも参加しており、人柄は熟知している。また、彼らは昨年自宅を購入して一緒に住んでおり、法的な手続きが遅れているが、実質夫婦である。

そんな2人であるが、改めて家族や友人達の前で夫婦となることを誓い、みんなに祝福されて、とても嬉しそうだった。新郎の「最初のデートの時以来、彼女を愛していた」という言葉は、親として何よりも嬉しい。娘は、ついに「人生のAnchor(錨)とも言うべきパートナー」を見つけたらしい。

Zoomには大至急セキュリティ問題解決を図って欲しい

ヴィデオ会議サービス「Zoom」は、2019年に上場したカリフォルニアのスタートアップによって運営されており、2019年12月時点では1日の利用者が1000万人程度だったが、コロナ禍で多くの人達がリモートワークに移行したことから、2020年3月には1日の利用者が2億人にまで増加している。誰でも簡単に使えるというアドバンテージで急速に成長し、そのために色々な問題が噴出しているが、最も大きな問題はセキュリティ問題である。但し、米国のように時差もあり、人々が広大な土地に散在して住む国では、F2Fで会えない状況下、この手のオンラインプラットフォームは必要である。そのためにも、Zoomには、大至急セキュリティ問題やそれ以外の多くの問題の解決をお願いしたい。

Zoomによって、より実感できるF2Fのリアルの良さ

多くの人達がコロナ禍の規制によって、人生の重要なイベントが出来なくなっている。それを考えると、何はともあれ、みんなが同時に1つのイベントにライブで参加して、顔を見ながら言葉を交わせるというのは、素晴らしいことだと思う。F2Fで会えないからこそ、よりF2Fの良さを実感する。早くこの状況が収束して、みんなが安心して、フィジカリーに会って、顔を見ながら話せる日を来ることを、心から祈っている。

PS①:娘がLast nameを変えてしまった

Zoom weddingの後で、私のPrivateのFacebook(私の英語の本名のアカウントで家族と親戚のみに公開している)を除くと、何と娘のLast nameが新郎のLast nameに変わっていた。彼らは、これから子供を持ち1つの家族として生きて行くので、子供のProtectionを考えれば当然の変更だけど、何となく末娘は変えないような気がしており、実際にインド系の名前に変わっていて、軽いショックを受けた。単純に、ちょっぴり寂しいということだけど、Zoom weddingより、こっちのほうに驚いたのが私の本音である。

PS②:そう言えば3年前の母のお葬式に夫はFacetimeで参加した

Zoom weddingをやった後、急に夫が3年前の母の山梨の菩提寺でのお葬式に、米国からFacetimeで参加したことを思い出した。夫は我が家の菩提寺にはお参りしており、元ソフトウエアのエンジニアだった和尚さんとも懇意な間柄で、夫が葬儀に参加したいと言っていますがと、和尚さんに確認すると、勿論いいですよとなった。私のiPhoneでFacetimeを映したが、驚いたのはスーツの大嫌いな夫が、ダークスーツにタイという正装で葬儀に参加したこと。私が着替えたの?と聞くと当たり前だと言っていたのを思い出す。弟と私だけがフィジカリーに参加して、夫はFacetime経由でライブにアメリカから参加した。我が家は臨済宗妙心寺派で禅の家系だが、夫は人一倍禅に興味があり、公案などへの理解もある。和尚さんの読経も含めて、静かに執り行われた母の葬儀は、夫も「素晴らしい」と褒める、良いお葬式であった。母は兎に角、夫が大好きで会うたびに走りながら体当たりするように夫に抱きついていた。ヴァーチャルだから云々といったことは何もなく、夫と弟と私達3人は葬儀を共有できた実感した。ヴァーチャルだから云々は何もないと思う。今の世は、誰もが時空を超えて、コミュニケートできるという、大きなアドバンテージがある。勿論F2Fのリアルにはかなわないけど、制限のある時には、ヴァーチャルなテクノロジーを活用すればいいだけ。心をオープンにすればいい、と思う。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑩「1週間で変わるショッピング・プロトコル」

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地元のButcher shopは米国生活において物凄く大切

地元のお肉屋さん(Butcher shop)は、ローカルコミュニティにとって重要なお店である(米国において日本ほど魚屋さんの重要性はなく、内陸部では魚屋のみの商売はあり得ない)。ハイレベルのAged beefのようなお肉を扱うお店は、蝶ネクタイをつけた店員が、日本では中々お目にかかれないような、様々なお肉を切り分け販売するほど、店のプレステージアスな位置づけは高くなる。我が家も1年前St Georgeに自宅を購入する前、自宅近くに、まず良いお肉屋さんがあるかどうかをチェックした。夫と2人で検索して調べておいたお肉屋さん「Dixie meats」は、かなりしっかりした良いお肉屋さんで、蝶ネクタイをしめて高価なAged beefを販売していないが、少なくともホームメイドのビーフジャーキーやソーセージの種類の多さ、さらに試しに買ってその場で食べたスライスされたスモークドのハムやターキーの美味しさたるや、夫と私は破顔してしまった。その時、私達と似たような年恰好の夫婦が後から店に入って来て、私達と同じような質問をしており、カリフォルニアから来たばかりであることも分かり、夫と2人でニンマリした。

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州外移住者流入増大によってBoom town的なりつつあるSt George

St Georgeは、Utah州の南端にあり、NevadaとArizonaに隣接し、Las Vegasから車で2時間という地理的要因と、冬は雪も降らずそんなに寒くなく、春と秋は温暖、夏は異常に暑いという気候もあり、州外からSnow Birds(寒さを避ける人達)がどんどん流入してきて、住宅開発が活発である。またアウトドアスポーツが非常に盛んで、トライアスロン、ロード及びマウンテンの自転車競技のメッカでもあり、世界中のアスリートが集まり、アウトドア愛好者のためのレンタルホームもどんどん建築中で、現在Boom town的な様相を呈している。

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By St. George Chamber of Commerce - St. George Chamber of Commerce, CC0

州外からの移住者の中で、特に多いのが、全てのモノが高い(税金、住宅、物価、保険、ダイニングアウト等々)カリフォルニアからのRefuges(避難民=我が家も然り)のような人達である。彼らの多くは、私達も含めて、まずState Liquor Storeをチェックする。Utahは、低アルコール度数のビールなどの酒類はマーケットやガスステーションなどで購入できるが、私の好きなワインは、州運営の酒販店舗の購入のみとなる。カリフォルニアのように、食料品と一緒に簡単にワイン購入が出来ないので、どの程度のワインがState Liquor Storeにあるか、私達も真っ先にDixie Meatsと同じショッピングプラザにある、State Liquor Storeをチェックした。品ぞろえは物凄く多岐にわたっているとは言い難いが、私のように毎日ワインを飲む人間のテーブルワインとしては、まずまずなので、まずホットした。

米国の酒類販売は地域によって大きく異なる "Dry, Wet and Mix"

以下のマップを見てもらいたい。2019年5月現在の米国の酒類に関するコミュニティ別の規制地域で、赤は「dry(酒類販売禁止)」、青は「wet(酒類販売OK)」、黄色は「mixed(酒類販売禁止とOKのミックス)」である。 Utahは青であるが前述したように規制があり、ワイン愛好者にとっては、ちょっと面倒くさい州である。ただこれも、習うより慣れろで、1週間に1度の割合でワイン購入する私は、消費量を冷蔵庫を見ながら計算して飲む、というパターンに慣れた。但し、コロナ禍でState Liquor Storeに勤務するF2Fで顧客に接する勤労者が、常に感染の危険に直面するという現在の勤務状態に関して不満を漏らしており、下手すると営業中止の可能性もあり、私はヒヤヒヤしている。今の営業時間は午後12時から19時までと短縮され、狭い店舗なので、顧客は1店舗内に5人までで、他の客は店外で2mの距離をとって待ち、1人出ると1人入るというパターンである(今日行ってきたが、待っている人のうち、まだ2-3割はマスクをかけていない)。

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By File:USA Counties with FIPS and names.svg: File:USA Counties with names.svg: User:Mr. Mattéderivative work Kbh3rdderivative work: Fry1989 - This file was derived from:  USA Counties with FIPS and names.svg:, Public Domain

お肉屋さんで6個のペーパーロール購入

先週までは5人という制限で顧客を店舗内に入れていたDixie Meatsも、ドアンの前に2脚の椅子をバリケードのように置いて、狭い店舗内に顧客を入れないという方式に変わっていた。店員は、まず店外の客のオーダーをドアの前の椅子越しに聞き取り、オーダーが出来あがるとクレジットカードを客からもらい、商品を渡すというシステムを採用していた。手書きの張り紙には、事前の電話によるオーダーをお願いしますと書いてあり、今後我が家はそうしようと思う。今日最も嬉しかったのは、このお肉屋さんが何とトイレットペーパーを販売していたこと! 商用のペーパーサプライのあるお肉屋さんは、ペーパーロールを6個で6.95ドルで販売していた。私はもちろん購入した(これで6週間は持つ)。

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After all tomorrow is another day

自主的自宅待機を含めて、制限のある生活も既に4週間目に突入しており、日々制限がきつくなる気がするが、いちいち、それに対して反応はしていない。むしろ今日のペーパー6個ゲットのようなささやかなことに大きな喜びを見出し、GWTWではないけど、"After all tomorrow is another day"の気分で、毎日何か小さなことでもPositiveなことを創出しよう思っている。夫との間では、ジョークやコントをしょっちゅうお互いに見せ合いながら、生活で笑うことにフォーカスしている。

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長期化に備えて、新たなルーティンを受け入れる

以下の表が示すように、ストレスによってアルコールの消費量は増大している。それに限らず、色んなメンタルな問題が起きているけど、自分を追い込んだり、落ち込ませるのは、自分自身の心の持ち方そのもの。ぐちゃぐちゃ文句を言わずに、長期化に備えて、新たなルーティンを受け入れることは肝だと思う。全てが終わった後で、明日は必ず別な日になるって信じようよ。

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