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アメリカの現実⑭「多様性への模索ーBiden政権が内務長官に初めて先住民族(Indigenous people)の女性を選んだことの意味」

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12月17日、Biden政権は、Interior Secretary(内務長官)に、初めて先住民族(Indigenous peoples)の女性、Deb Haaland(60歳)を指名した。この選択は、内務省の長官という職務を考えると、実に理にかなったものである。内務省は、職員7万人以上を擁する大規模な機関で、連邦政府が承認した578の先住民族の土地を監督している。

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上院で承認されれば、彼女は先住民として初の閣僚となり、しばしば問題が生じる内務省と先住民との関係を変える可能性がある。先住民Laguna Pueblo部族のHaalandは、ニューメキシコ州選出の民主党下院議員(1期目)で、この起用にも見られるように、Biden政権の閣僚やスタッフメンバーの人選は、米国史上最も多様な人達によって構成されることとなる(女性、非白人、カミングアウトしているLGBTQ+など)。

米国に住む先住民族の歴史

今更説明の必要もないぐらいに、元々北米大陸に住んでいた先住民族は、開拓者として侵略してきた白人によって、幾度もの約束の裏切り、強制移住、虐殺など、様々な悲劇的な歴史を経て、現在「Indian reservation(インディアン保留地)」と呼ばれる特別区域に追いやられた。Indian reservationは「居留地」と言われるが、本来「保留地」と表記すべきもので、インディアンの故国として、白人が保障してリザーブした土地という意味である。これには、いずれ「保留」を解消するという意味合いも含まれていた。

白人達は、アメリカ大陸を「開拓」する上で、インディアンとの土地問題を解決すべく、彼らと条約を結び保留地に住まわせるという政策をとり、政府と各部族との間に結ばれた、保留地を軸とした条約の数は371に上る。当初連邦政府はインディアンを閉じ込めるといった考えを持たず、白人による土地の売買や勝手な進入を許されないということを約束していた。またインディアンは保留地を通る幌馬車やカウボーイから、通行料を取っていた。

但し膨張する入植者達の強い要求により、圧倒的な武力を背景に白人側は部族に土地の割譲を迫り、部族は僅かな年金と引き換えに条約を呑まざるを得なくなっていく。Thomas Jeffersonは「インディアン達の意思を無視して白人側が勝手に保留地の土地を買ったりすることは許されない」と述べたが、それは全くの空論となる。

土地を巡る白人とインディアンの争いは次第に激化し、Indian Wars(インディアン戦争)」、「強制移住」、「保留地に入らないインディアン部族は絶滅させる」、「バッファロー絶滅政策(インディアンの食糧及び生活の源だったバッファローは19世紀初頭4千万頭を超えていたが、白人達の戦略で19世紀末には野生では絶滅に近い状態となる)」、「Dawes Act(ドーズ法)の可決(1886年インディアン保留地内の土地を個人のものとして細分化し、不動産化していく法律。この法律の下で部族の莫大な土地は僅かな年金や品物と交換されて(まともに支払われることは殆ど無かった)矮小化されていった)と、あの手この手で多くのインディアンを締め付け、彼らを「Indian reservation」に追い込んで行った。

現在も大きな政治的対立を生んでいる、ノースダコタ石油パイプライン(DAPL)問題

現在でも政府と先住民族の争点は続いている。先住民族の聖地とエネルギー開発を巡り、Obama前政権とTrump現政権の意見が真っ二つに割れた「DAPL(Dakota Access Pipeline)問題」がそれである。DAPLはノースダコタ州からサウスダコタ州を経てイリノイ州につながる全長1886kmの原油パイプラインで総事業費38億ドルにのぼる。パイプラインはミズリー川をせき止めて作った人造湖の下を潜り抜ける構造で、この湖はStanding Rock Siouxs部族の保留地内にあり、先住民は伝統儀式の対象地として神聖視している。さらにこのパイプラインからの汚染の懸念もある。

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2016年11月大統領選挙の直前、Obama前大統領は住民達の請願を受けてルートの変更を命じた。しかしTrumpは大統領就任の翌年2017年2月、元のルートでの建設を承認し、Obama裁定をひっくり返した。これに対して、先住民達を支持する世界の環境団体が同地を訪問、抗議の座り込み活動が長期間にわたって展開された。

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またDAPLへのファイナンスは、日本のみずほ銀行、三菱UFJ銀行を含めたグローバルな主要金融機関によるシンジケート団がローンを提供しており、これも大きな論点となった。こうした反対運動の中で、DAPLは運営会社Energy Transferによって建設が進められ、2017年6月に運行を開始した。

今年の3月ワシントン連邦地方裁判所(コロンビア特別区連邦地裁)は、このDAPLを巡る訴訟で、同計画に承認を与えた米陸軍工兵隊(USACE)による事前環境影響評価の不適切性を訴えた原告の先住民の主張を認め、USACEに調査のやり直しを命ずる判決を下した判事は、USACEがパイプライン建設で付与した許可は、連邦環境法による判断において「概ね適合しているが、先住民にとって『重要な例外』がある場合は、検討の余地を残しておくべきだ」として、潜在的な影響をさらに調査評価することを命じた。追加的な調査・評価の対象として、パイプラインからの原油漏えいを検知するシステムの有効性、創業者の安全管理記録の確認、ノースダコタの冬の期間の影響、漏洩の最悪シナリオの分析(ストレステスト)等である。

この判決に対して、原告の弁護士は「我々はパイプラインが廃止されるまで、訴訟を戦い抜く。おそらく、完全な環境評価は1年か2年はかかる。その間に、民主党の新大統領に交代し、USACEも正しい判断をとることができるようになる」と指摘している。つまり、この判決の意味は重く、大統領選挙で勝利したBiden政権が、事業廃止を求める可能性もあり得る。

インディアンへの強制的な白人同化政策がもたらした悲劇

1950年代から連邦政府の方針としては、部族の意向を無視して「保留地」を解消していこうという方向にある(これは条約違反)。「インディアン」という特別な存在ではなく「アメリカ市民」として納税させ、国民の義務を負わせるという政府の意図のもとで、「インディアン寄宿学校」による強制同化政策により、インディアンの白人文化への同化が進んだ。20世紀初頭からすでに、部族独自の純血性、民族性は薄れ、様々な部族が絶滅認定され、保留地を没収されていった。

この白人文化の同化政策が、実は今のインディアンの各部族の抱える悩みである「失われた部族の文化と伝統への回帰」への重いボディブローとなっている。殆どの保留地は産業を持てず、貧困にあえぎ、部族の誇りも失っていった。保留地で生活する限り、僅かながらも条約規定に基づいた年金が入るため、これに依存して自立できない人々も多く、失業率は半数を超え、アルコール依存症率は高く、健康面でも多くの疾病を抱えている。また、今回のコロナ禍でも多くの感染者を出すといった、厳しい状況下で生活している。

部族の伝統と文化の復活のための動き

彼らはこうした状況下で、自らの文化と伝統の復活を図るべく、徐々に活動し始めている。身近な例としては、私の夫が少年時代、自宅で弟のような存在として、一緒に暮らしたHopi(ホピ族)の男性があげられる。彼はその後成長して、ホピが信仰する精霊Kachinaの人形を作るアーティストとなった。但し、彼は年齢と共に視力の衰えがひどくなり、もう作品は作ることができなくなり、現在はアーティストとしての活動ではなく、ホピ族の伝統的な手法で農作物を作りながら、子供たちにホピの歴史や伝統を教えて、部族の文化保持活動を保留地で行っている。

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今年の夏、彼はアリゾナから子供達(彼は自分の子供はいないが、部族の恵まれない子供を自分の子供のように育てている)と一緒に、わが家に来てひと時を過ごしたが、彼の語るホピ族の物語は、自然への畏敬と一体化の思想が貫かれていて、とても共鳴した。

この写真は、彼の最期の作品で、美術館へのサポートも兼ねて、私たちはこれを今年購入した。これはKachinaのカテゴリの中で、「Runners(4月の儀式にのみ登場しホピの男と競争する)」の「Rattle」と呼ばれるものである。大きさは、台から頭頂の羽飾りまで28㎝という小さなものである。

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Kachinaには、その役割や形態により、以下のようなカテゴリに分けることができる。

Chief Kachinas (リーダー格、重要な役割を持つ) - Aholi, Eototo, Masaw, Ahola, Crow Mother, Chakwaina, Wupamo, Soyal, Grand Mother
Warriors or Guards(儀式を滞り無く行うための観客のコントロールや和を乱す者への罰を与える) - Hilili, Ewiro, Broad Face, Warrior Maiden, Owl, Ahote, Hoote, Whipper, Owango-zrozro
Dancers(最も一般的なグループ) - Hair, Bean, Corn, Deer, Antelope, Humming Bird, Eagle
Runners(4月の儀式にのみ登場しホピの男と競争する) - Rattle, Chili, Pot Carrier, Chipmunk, Kokopelli Mana, Red Kilt
Clowns(儀式を和ませる) - Hano Clown(Koshare), Mocking, Mud Head, Navajo Clown, Hoe

内務長官となったDeb Haalandに期待すること

アメリカの内務省は、国有地や天然資源の保護が主な業務で、傘下には、先住民部族の認定や部族と連邦政府間の連絡調整にあたる「インディアン事務局」がある。Haalandは、議会で先住民コミュニティへの公共サービス改善に重点的に取り組み、コロナ禍関連支援を重視していた。New York Timesに掲載された声明の中で、彼女は「Joe BidenとKamala Harrisの気候政策を推進し、Trump政権が破壊した連邦政府と先住民指導部との関係の修復を支援し、わが国の歴史で初となる先住民の閣僚を務めるのは名誉なことだ」と述べている。

彼女が、Biden政権の内務長官となったからといって、勿論、米国の190万人の先住民族の問題が、一挙に解決するわけではない。但し、全てのアメリカ人の声を聴く耳を持つ必要のある連邦政府に、彼女が入閣することは、歴史の中で、常に置き忘れたように扱われてきた先住民族にとって、大きな一歩と言える。

この広大な北米大陸の土地に先住していた人々は、元々土地に関して「私有」という概念を持っていなかった。彼らは「自然と大地」への畏敬の元で、それに沿った形で長い間暮らしていた。その先住民族の1人が、国政レベルで「環境問題」に関与・注力する時がきた。これは実に理にかなっているように思える。

アメリカという国は、「Diversity & Inclusivity」という、マントラをこれからも、永遠に唱え続ける必要がある。なぜならば、この国は、もともと多様な人々によって構成されて、今後も多様な人々が移住してくることによって、成長し続けるからである。このマントラを可視化できるのが嬉しい。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑪「結局環境問題って、人間が社会活動を停止すると解決されるってこと?」

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インドのパンジャブ州で、200 km近く離れたヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見晴らせるようになる

インドでは2週間以上前からLock down(都市封鎖)に入り、首相は国民の外出を全面的に禁止すると発表していたが、これにより、インド全域における大気汚染が大幅に改善されたらしい。CNNの記事によれば、パンジャブ州で200 km近く離れたヒマラヤ山脈が、ほぼ30年ぶりに見晴らせるようになったと報じている。

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インドではこの都市封鎖で工場は閉鎖され、車利用がなくなり、航空機運行停止などで、大気汚染が劇的に改善されているらしい。CNNは、規制が始まった初日に微小粒子状物質「PM 10」が最大で44%減少し、全土のLock downの1週目には、85都市で大気汚染が改善したと伝えている。

中国の大気汚染は、コロナ禍による人間の社会活動の停止で劇的に改善

コロナ禍の生活が始まり、夫も私も「今一番喜んでいるのは地球そのものだろうね。人間が社会経済活動をスローダウンあるいは停止すれば、地球の環境リソースへの負荷が極端に減るもんね」と話したことを思い出す。インドと同様に、以下のNASAの画像は、中国の大気汚染が、コロナ禍による人間の社会活動停止で、如何に減ったかを如実に証明している(2020年1月と2月の比較)。

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人々は生活のためと称して、地球環境に滅茶苦茶重い負荷をかけて生きている。

2019年はGreta Thunbergの年と言われるくらい、17歳の少女が環境問題解決の緊急性を世界に提起したが、実は地球(ガイア)のほうがとっくに、人類という、地球史上稀に見る自己中心の動物にあきれ果てて、リセットする段取りをしてしまったと言えるような気がする。人類史は「疫病」との戦いと言っても過言ではない。地球(ガイア)は、しょうがないここまでのさばって改善する気がないなら、定番だけどかなり強めの「疫病カード」を出しましょう、と言って、さっとテーブルに置いてしまった。

過去100年ぐらい、このカードをマジに見たことがなかった人間達が、右往左往するのを、どこかで冷たい眼差しで見つめているような気がする。人と人とが近距離で接するという、人類が最も好きな行為を媒介として拡散するウィルスは、実に防ぎにくい人類の敵である。

地球(ガイア)もリセットしたがっているんだから、我々もしなきゃ

「欲望の肥大化」という言葉を、久しぶりに思い出した。大学時代、マスメディアとマスコミュニケーションを専攻していた時、確かゼミナールの原書購読(英語書籍の原文を読む)で学んだような気がする。限りなく肥大化する人間の欲望っていうやつは、現在テクノロジーによって、誰もがとてつもなく肥大化させてしまい、「便利で簡単に何でも手に入る、或いは出来ちゃう時代」を、現出させてしまったということだと思う。これは滅茶苦茶、地球環境に負荷をかけて、いくらそれを防ごうとしても、既得権と利害関係まみれての政治家や企業家によって、そう簡単に元に戻せないのが現状である。地球(ガイア)が、「OK,じゃあ、わしのほうでやってあげる」と決めて、実行したような気がする。

この状況をくぐりぬけた先は、今までなんだかんだ理屈や理由をつけて、社会全体の仕組みの変革を拒否していた輩に対して、俯瞰で眺めながら、構造改革をするといったMovementが必要だと思う。こんだけ、みんなが制限の中で真面目にコロナ禍に立ち向かって生活し、さらに真っ先に影響を受けて失業した人達は日々の生活にも事欠く生活をしている。いつまでも、現状維持をしていては、また同じことが起きる。リセットしようよ、今がその時期なんだから。

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コロナ禍でのアメリカ生活⑤「ガイア(地球)は人類に対して、怒っているんだろうか?」

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トイレットペーパーをゲットした瞬間、クンタ・キンテ誕生状態となる

やった!夫がWalgreensでトイレットペーパーを2個ゲットして帰って来た。彼は、まるで狩猟時代の狩から戻った戦士のような得意顔で、どうと2個のロールを私に突き出した!我が家には神棚も仏壇もないけど、私はアフリカの大地にクンタ・キンテ(Kunta Kinte)が生まれた瞬間の如く(TVミニシリーズRootsの有名なシーン)、ロールを高く掲げて、一礼した。これで我が家もロールの在庫は9個となる。ふうう。

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Walgreensは1人当たり2個という制限を付けて販売しているので、これをこまめにゲットしていけば、我が家のロールは滞りなく在庫補充が可能となる。私は、常にペーパーの心配をしている訳ではなく、週に1度の食料品の買い物でも、まずは必要なものを補充するのみにして、他の人に迷惑をかける「買いだめ」は一切していない。アメリカの家には広いPantry(食料品を収納するスペース:部屋と言えるぐらい広い)があるので、大量の食料品が収納できてしまい、多くの家庭ではここにモノを溜め込んでいる。我が家はかなりスカスカで、夫も私も、最悪感染して隔離する状況になった時に買い物をしないで済むぐらいのスープの缶詰とかを、普段より多めに買ったぐらいで、モノ溜め込んでいない。注:以下の写真は我が家のモノではない

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とうとう日本もアメリカからの入国を拒否

日本もアメリカからの入国を拒否するくらいにアメリカの感染者数と死者の数は毎日うなぎのぼりである。以下のデータが示すように、感染者数でトップに躍り出たアメリカは、昨日14,904人が新たに感染して合計168,369人、死者は351人が追加されて合計2,934人が亡くなっている。勿論アメリカ以外のイタリア、スペイン、フランス、英国といった欧州と、イランの感染拡大も激化している。

まるで、地球(ガイア)の怒りが爆発して、これ以上地球の資源を無自覚・無尽蔵に食い散らかす人類への鉄槌の如く、この疫病は、ロシアも北朝鮮もアフリカ諸国も南半球の国々でも暴れ始めている。

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地球(ガイア)は怒っているんだろうか?

私の友人の山本一郎さんが、ブログでこう書いている。「人類社会の経済活動が低迷すれば、環境問題は解決するんです。グレタさんが各国首脳を激しく論難していた環境問題は、短期的にコロナウイルスが強制的に解決してくれました。あとは、その先に不幸な感染者や経済破綻者たちの望まない死が頻発しないことを祈るのみであります。」

コロナ禍生活が始まり、夫も私も「今一番喜んでいるのは地球そのものだろうね。人間が社会経済活動をスローダウンあるいは停止すれば、地球の環境リソースへの負荷が極端に減るもんね」と話したことを思い出す。以下のNASAの中国の大気汚染が、コロナによる人間の活動停止で、如何に減ったかを画像が如実に証明している。

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人々は、生活と称して、地球の環境に負荷を掛けながら、生きているかが、この画像を見れば一目瞭然である。

「疫病」って人間が環境(=地球)に負荷をかけ始めると発生する?

今回のコロナ禍は、古来から「疫病」って呼ばれている現象で、長い人類の歴史はこの「疫病」との戦いで、たまたま今回のようにパンデミックと言われる規模で、過去100年ぐらい発生してこなかったから、今右往左往している。これはある意味、中性子爆弾に似ていて、建物は破壊されずに人間だけが失われるという、人類が最も苦手とする戦い。理論的には、「ウイルスを終息させる」か「人類全員がウイルスにかかり病気になって免疫を持つ」しか解決方法はなく、そのどちらも簡単には出来ないし、終わらない。

以下に世界的歴史学者・哲学者のYuval Noah Harari「In the Battle Against Coronavirus, Humanity Lacks Leadership」日本語訳の中の抜粋を記す

「感染症は、現在のグローバル化時代のはるか以前から、厖大な数の人命を奪ってきた。14世紀には、飛行機もクルーズ船もなかったというのに、黒死病(ペスト)は10年そこそこで東アジアから西ヨーロッパへと拡がり、ユーラシア大陸の人口の四半分を超える7500万~2億人が亡くなった。イングランドでは、10人に4人が命を落とし、フィレンツェの町は、10万の住民のうち5万人を失った。

 1520年3月、フランシスコ・デ・エギアという、たった1人の天然痘ウイルス保有者がメキシコに上陸した。当時の中央アメリカには電車もバスもなければ、ロバさえいなかった。それにもかかわらず、天然痘は大流行し、12月までに中央アメリカ全域が大打撃を受け、一部の推定によると、人口の3分の1が亡くなったとされている。

 1918年には、ひどい悪性のインフルエンザウイルスが数か月のうちに世界の隅々まで拡がり、5億もの人が感染した。これは当時の人口の4分の1を超える。インドでは人口の5%、タヒチ島では14%、サモア諸島では20%が亡くなったと推定されている。このパンデミック(世界的大流行)は、1年にも満たぬうちに何千万(ことによると1億)もの人の命を奪った。これは、4年に及ぶ第1次世界大戦の悲惨な戦いでの死者を上回る数だ。」

今やるべきことは、まずは自分がウィルスのキャリアにならないこと

日本の人は、感染者数の数字が低いせいか、かなり普通の生活を多くの人達が平気でしており、Social distancingの重要性をそれほど認知していないように見える。ロックダウンの状況のリアリティも、イマイチぴんと来ていない感じで、かなりのんびりしているように見える。でも、嵐は来る、或いはすでに波打ち際まで来ていることは事実である。経済的な打撃も然りだけど、これから人命喪失などで、どこまで誰が彼らを救えるのか?といった、医療崩壊も含めた惨い現実が近づいてくる可能性が高い。

言霊を恐れる日本は、最悪に備えたリスクマネジメントを、言う、聞くのを嫌がるけど、いやだと言っている時間はない。世界中が、嵐は来ることを予期して、今できることを必死にやっている。

個人としては、まず自分がウィルスキャリアにならないように、行動するしかない。

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