人々は州ごとの制限緩和をまだ信用していない
米国は5/4から州によって異なるが、コロナ禍による人々及びビジネスの規制緩和を実施し始めた。私の実感レベルは、まだまだこのパンデミックは収束とは程遠いし、自分自身が、次の感染数上昇の波を作る手伝いをしたくないということで、基本的には週に1度の食料品の買い出し以外は、不必要な外出及び人との接触は避けている。過去2か月間、毎朝6時起床、2時間自宅オフィスで働き、その後8:00から朝稽古(Jazzercise)をオンラインのオンデマンドで1時間して、また仕事に戻り、夕方17時には自宅のオフィスのデスクを離れる、といったルーティンを崩していない。
4/28-5/3の直近の調査では、一般の人達のコロナ禍に関する気持ちは、「最悪は過ぎたとする人が31%」、「最悪は今だとする人が30%」、「最悪はこれからやってくるとする人が38%」と、意見は分かれている。これはどこに住んでいるかという個人の居住エリア、さらにどんなコロナ禍による体験をしたか、など実感レベルによって、大きく異なる。
以下の表は、同調査で「自分が居住する州でどんなビジネスを再開すべきか?」という質問への回答である。再開を望むトップは、ゴルフコース41%で、以下は順に小売店舗34%、理髪店・美容院31%、銃販売店29%、レストラン内での外食26%、ネイルサロン25%、ジム22%、映画館劇場18%と続く。
ゴルフコースの41%は、戸外で運動しながら物理的にソーシャル可能だということで、2 mのPhysical distancingを取りながらエンジョイできるので、トップに上がる理由は分かる。但し、最初にパンデミックの影響が大きかったレストランに関しては26%と低い数字である。これは、飛沫が飛び交い空気感染の恐れが高いレストランに関しては、お客は行きにくいのが現状で、今後ビジネスを再開しても、実際に以前のように顧客が来るかどうかは難しいところである。また、今後も引き続き経済的な不安を抱える消費者は、自宅待機中に外食がもたらす価値以上に、自宅で食事をする楽しさ、快適さ、便利さ、経済性などを再認識した可能性も高い。
Panic buyingで新たに注目される急増した銃セールス
多分、日本の人達は、この表の4番目に入っている銃販売29%を見て、大いに首を傾げると思う。「なぜコロナ禍で銃を買いたいのか?」という疑問は、以下のNY Timesの月間の銃セールスの推移を見ると理解しやすいと思う。
コロナ禍によって「Panic buying」状態となったアメリカ人は、トイレットペーパーや缶詰のみならず、2020年3月のたった1か月で新たに190万の銃を購入した。これは過去の月間銃セールスの中で、2013年1月のObamaの再選と2012年12月小学生20人を含む26人が殺されたSandy Hook Elementary Schoolの大量銃撃事件に次ぐ、2番目に大きなセールス増となっている。当然に、銃購入の際のバックグランドチェックも急増しており、2/23から3/31までの銃セールスのレベニューは、対前年比792%増と跳ね上がっている。
アメリカ人は、ハリケーン・地震・竜巻などの自然災害、Obama政権誕生や再選(銃規制を主張していた)、更に学校やコンサートなどの大量銃撃事件などが起こるたびに、銃砲店に駆け込む。
アメリカ人の銃カルチャーは「自衛」という発想で歴史的にも深く根付いており、銃を所持することは憲法が保障する権利として、多くの人がそれを強く主張する。この銃カルチャーの根底に潜むサイコロジカルな感情の中には「政府ですら必ずしも自分を守る側にいつも立っている訳ではなく、時には自分達に襲い掛かる可能性もある。自分と自分の家族を守るために、自衛の手段として、銃は必要である」という歴史的に構築された政府への懐疑的な見方も潜む。
過去のパンデミックではここまで銃セールスは増加していなかった。
今回のパンデミックのサイコロジカルなプレッシャーーは、今までに例を見ない形で、人々を心理的に追い込んでいる。何故か?
ここから私の考えだが、20世紀が構築した薔薇色の世界ともいうべき「グローバル経済及び社会」が如何に脆弱かということを、2020年コロナが立証してしまったからではないか? パンデミックは、「ヒト」と「モノ」の移動を停止させて、世界市場に大打撃を与え、原油や株価の暴落を引き起こし、「カネ」の流れも止めてしまった。その間、Fake newsやPropagandaも含めて「情報」だけは世界中を駆け巡り、人々の不安をより増幅させている。
今日発表された米国の失業データによると、先週更に320万人が失業保険を申請し、過去7週間で合計3,300万人以上が失業した。州によっては就業人口の25%が失業してしまったともいう。
医療崩壊も然りだが、2か月前まで現大統領は、米国の薔薇色の経済の強さと失業率の低さを謳歌し、己のリーダーシップが、この薔薇色の米国社会を牽引していると豪語していた。彼が描いた「砂上の楼閣」は、あっという間に崩れ、人々は今の生活、或いは3か月後の暮らしを、どのように切り抜けるのかと、異常な不安に苛まれている。これは人々が過去を振り返っても例のない状況で、アメリカというInstitutionが如何に脆く脆弱かという疑問はもたらし、政府や州や企業に頼れない以上「自衛強化(銃購入)」に走ると、考える人を創出してしまったのではないか? と思う。
メンタルヘルスの悪化も考慮すべき
私が一番心配するのは、こうした人々の不安を逆手にとって、それを更に煽り、「新たな敵(例えばアジア人へのヘイトクライム)」をこしらえて、暴力による解決を先導しようとする集団やグループの動きである。彼らは、言葉巧みに密やかに、恣意的な情報を流して、自分達の仲間として、獲得したい人達を誘導する。殆どの銃の所有者及び購入者は、武器としての銃というよりは、射撃やハンティングなどの趣味、或いは牧場や農場経営で野生動物から家畜を守る自衛のためなど、銃撃事件とは程遠い人達である。但し、そうした人達でも、コロナ禍で切羽詰まった人間に自宅を襲われるといった危険への備えは考えていると思う。
パンデミックはメンタルヘルスの弱い人達を、さらに不安に陥れる可能性があり、そうした人達が上述したグループなどと接触したり煽られたりすると、思いもかけない事件が起きる。DVの増加やオピオイドやその他の薬の中毒患者の過剰摂取も増えており、メンタルヘルスの悪化は否めない事実である。様々な角度で、このパンデミックを捉え、俯瞰で見ながら、出来る限りPositiveな気持ちになる必要がある。「パンデミックは、必ず収束する」、このマントラを唱えて、Panic buyingといった行為は避けることを勧める。