私は常にセミナーの冒頭で、質の高い決断とクリエイティビティのある解決法のために「異論の持つチカラ」を用いることを奨励している。
Charlan Jeanne Nemeth教授の著作である“In Defense of Troublemakers”では、この「異論の持つチカラ」を以下のように紹介している。
「常識的なバイヤス」に影響を受けると、悪い決断が生まれる
悪い決断とは、インテリジェンスやナレッジの欠落で起こるものではない。悪い決断は、ソーシャルプロセス、すなわち他の人の意見や予想可能なグループプロセスといったものによって、強く影響される。ソーシャルプロセス(=常識的なバイヤス)は、我々が気がつかないうちに、我々の考え方をしばしば変えてしまう。
ビジネスおよび人生における決断で、重要なことは、まずソーシャルプロセスによって、無意識に大きく影響を受ける「常識的なバイヤスの力」を弱めることである。そのために、人々は「異論に触れて、そのショックによって想像力を拡張し、予想できないものへと向かおうとする、自らの意思を持つ」必要がある。
Be yourself でいることが大切
私は、良くBoldな色や柄の服、或いは幅広の帽子やカウボーイブーツ、様々な色合いのサングランスといった格好でセミナーに登場する。通常参加者は、私の異端者ぶりを見て「何だあの人?」みたいな反応が起きる。実はこれが最も重要な部分で、私は「絵に描いたような異分子=傾奇者」的な異論を冒頭にぶつけて、まず参加者の講師あるいは女性登壇者といったところから想像される常識的なバイヤスを壊すことから始める。
日本に来ると夏でも冬でも多くの人達はモノクロームの服装で、同化・ユニフォーム化しており、私のような派手な格好の人は中々いない。特に女性は大抵長い髪で黒、グレイ、ベージュといった地味な色合いのスーツが多く、私は圧倒的に目立つ。私はわざとこうした格好をしている訳ではなく、本当に自分が好きなファッションやスタイル、色を選ぶと、自然とこういう格好になるだけで、決して演じてはいない。ただ自分自身でいたいだけである。
人は自由な連想が出来ない
カリフォルニア大学バークレー校心理学者Charlan Nemeth教授は、学生達に対してある実験をした。人は、実は自由に連想しようと思っても、それほど自由にはなれない。例えば、「青い」という言葉に関して自由に連想しようとしても、答えは「空」や「海」などといったありきたりの答えが出てくる。人間の連想は、言葉によって形成され、そして言葉は、ありきたりな表現に満ちている。
ここに私のような「異論」する人を入れると、被験者グループは独創的な連想をし始める。「青」を見て「空」、「緑」を見て「草」を思い浮かべる代わりに、彼らは連想を広げ、「青」から「マイルス・デイビス」や「マネーロンダリング」や「パイ」を思い浮かべるようになり、ありきたりな答えばかりが出てくることはなくなった。
「異論の持つチカラ」とは、「驚きのチカラ」に他ならない。
「異論の持つチカラ」とは、「驚きのチカラ」に他ならない。間違った答えが叫ばれるのを聞くこと、つまり青が「緑」と言われるのを聞いてショックを受けて、人は色の持つ意味を、もう一度考え始める。その結果、青を空に安易に結びつける、我々の緊張感のない連想が、影を潜める。予期せぬものと出合うことで、人間の想像力が大きく広がる。こうして弾けた想像力は、常に影響されていたソーシャルプロセスの鎖から解き放されて、自らが考えて決断するチカラを取り戻す。
私の幅広の帽子、サングラス、カウボーイブーツは、こういう意味で、セミナーにおいて、とっても大切な意味を持っている。